4章:社長の優しさ?

第33話

発端となった鮫島はというと、ばつが悪いのかイトカとは一切口を利かなくなった。


 もともと口数の少ない彼女だが挨拶どころか顔も見なくなったのは、よっぽど気に入らないから。しかし社長の前でそんな態度も取れないため、彼女なりの些細な抵抗。


 イトカ自身も『喋らなければ喋らないで揉めなくていいや』と、さほど気にしてもいなかった。


 そんな事もありながらシバ社長の下で働くようになってから、ようやく1か月が経とうとしていた―――


「我ながら掃除のセンスを感じる」


 磨き終わった社長室の壁一面の窓ガラスを見つめ『うんうん、上出来』と自画自賛していると。


「おい、まだ次の仕事が残ってる」


 鬼教官のようなスパルタ社長の指令が下る。


「はいはい。次はどんなご用件でしょうか」

「”はい”は一回だ。いくつかの店舗から試案の返答を頼まれた。お前も手伝え」


 そう言って各店舗から預かった大量の資料をデスクに広げ始めた。


「いやそれはさすがに社長の仕事じゃ……」

「文句は受け付けない」


 あいかわらず扱いは雑だが、軽く流す気持ちで引き受けてはいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る