第7章: つながる命の旋律

アリアは海の広大な世界を泳ぎ続けていた。最初はただの音楽として響いていた彼女の歌声。しかし今、彼女が歌うたびにその歌声が、命をつなげる旋律に変わっていくのを感じていた。


アリアの歌声が海のすべてに響き渡る。魚たちはそのリズムに合わせて踊るように泳ぎ、亀たちはゆっくりと彼女の周りを囲む。まるで、彼女の歌が彼らに語りかけ、共鳴しているようだった。その瞬間、アリアは驚くべきことに気づく。彼女はひとりではなかった。


「私はひとりじゃないんだ。」

心の中でその言葉が何度も繰り返される。彼女の歌声が、かつて届かなかった命たちと深くつながり、響き合っていることを実感した。


他のクジラたちの姿も見え始めた。最初は遠くに見えるだけだったが、次第にその存在がはっきりと感じられるようになる。波長の違いを乗り越えて、彼らの心が一つになっていく。アリアの歌声が、波の音の中で微細な音を生み出し、それがクジラたちと共鳴していることを感じ取った。


その時、アリアは自分の歌が単なる音楽ではないことに気づく。彼女の歌声は命をつなげる旋律、海を超えて響く声であると。彼女が歌うことで、命と命が手を取り合い、結びつく力を持っている。アリアはその力を信じるようになり、次第に自分の歌声に誇りを持つようになった。


「私はひとりじゃない。」


その言葉が胸に深く刻まれ、彼女は心から安らぎを感じた。アリアの歌声は、彼女の内なる孤独を超えて、命の輪を広げ続けていた。

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