雛祭りの魔法
だしまき
3月3日の魔法
3月3日、雛祭り、女児の幸福を祈るために行われ、雛人形などを飾る日、まぁ高校生ともなると雛人形はもう飾らなくなるし、ただの日なのだが、今日この日は三年生が卒業する日、そして私は今日先輩に告白する。
はずだった……気が付けば卒業式は終わり、その後の後輩との交流時間も終わってしまっていた
「はぁ~告白出来なかったなぁ~先輩人気だからあんま話せんかったし……はぁ~」
「どうしたの?雪ちゃん」
「せんぱーい聞いて下さいよー今日卒業式で最後だってのにせんぱ……いが……って先輩ぃぃ⁉ななななんでここにいるんですか!?いまクラスで最後の交流中なんじゃないんですか!?」
「交流会ならさっき終わったよ、んで私は最後に三年間お世話になったこの『鳥研究部』の部室に別れを告げに来たってわけ、ちょうど忘れ物も二つあったしね」
そう言って先輩が手に取ったのは、私が先輩に一目惚れしてノリでこの部活に入った時に先輩と二人で一緒に買った『トリの降臨』という本だった、そして先輩はこう続ける
「これがないと雪ちゃんとのお揃いが一つなくなっちゃうから」
そう言って先輩がこちらに微笑む、その微笑み一つで私の心臓が激しくなる、やっぱり私先輩に恋…してるよな…そして私はそれを誤魔化すように先輩に聞く
「それで先輩もう一つの忘れ物って何ですか?」
「好きな人」
「じゃあここにはいないかもですね、誰なんですか?先輩せっかくなんで教えてくださいよ」
心に冷たい乾いた風が吹く
「なんでここにいないと思ったの?ここにいなかったら私ここに来てないよ、本置いてったのわざとだし、雪ちゃんなら卒業式終わったらここに行くと思ったからね」
「え、あ、あのぉつまり先輩の好きな人って…私ってこと…ですか?」
「私ね、雛祭りってね、女の子に特別な魔法がかかると思うんだよね」
「話をそらさないでください、こっちは告白かどうか気になって気が気じゃないんです」
「ごめんね、ちょっと聞いてて、雛祭りは女の子に勇気をくれるんだ、少なくとも私にとっては」
部室が数秒無音になる
「……ねぇ雪ちゃん…こんな私でよかったら付き合ってくれないかな」
「私でいいなら喜んで」
私たちの目には涙が浮かんだいた
雛祭りの魔法 だしまき @dashimakitamago2009
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