ダイヤル発信【軌跡】

村添たばさ

第1話

毎日、コール音がなる。


いつもいつも、同じ人にかける私。





出てくれる確率は、大体10%くらい。


でも、その10%にかけて…





私は毎夜、電話をかける。







*ダイヤル発信*






つい何日か前、彼氏が出来た。



優しくて、でも放任主義なほうで…束縛もあんまり激しくない。


直隆くんとは…真逆の彼氏。






「今日、楽しかったね~」


今日は、そんな彼氏である関くんと久々に会った。



2人ではなく、伊月も一緒。


元々は他にも何人か居たのだけれど、方向的な問題もあり、帰り道は3人になった。




行き先も決めず、とりあえずまだ解散はしたくなくて…ふらふらと歩く。


私と伊月が遊ぶと、いつもこんな感じだ。


そんな私と伊月に、文句も言わずついてきてくれる関くん…やっぱり、優しい人だ。






自然と足はいつも辿りつくショッピングセンターへと向かう。


…直隆くんとよく密会した、あのショッピングセンターへ。




まぁ、今更何を思い出すわけでもなく、ただ近場に遊べるような場所がココしかないだけ。


ショッピングセンターの前の交差点に着くと、丁度歩行者信号が点滅しはじめたので、私達は立ち止まる。





そこに丁度、次青になるほうに1つの自転車が来た。


あ、ココに止まってると邪魔かな、と、一歩下がる。





この辺りで邪魔にはならないか…と、顔を上げた瞬間、多分私の顔は凍りついたと思う。




目の前に、直隆くんが居たから。







「い、つき…」


恐る恐る、確認を取ろうと伊月を呼ぶ。





「え?」


こっちを見て、どうしたの、とでも言いたげに、じっと見つめてきた。





――あ、直隆くんの渡るほう、青になった。





「直隆く…」


早く伊月に確認してもらわなきゃ、


でも、直隆くんに気付かれたくない。




だから、ボソッと呟いたのに。







「どうしたの?」



やっぱり、伝わらなくて。







遠くなってく後姿。


自転車に貼ってあった学校指定のステッカーで、(あぁ、本人だ)と確認してしまう。






「今の…直隆くんだったよね」





気のせいだよ、とか


見てなかったからわからない、だとか言われたけれど。






私にはそれが確実に直隆くんだったって言える。










だってね



その夜、直隆くんは1ヶ月ぶりに、私の電話に出てくれたから。










END…?

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ダイヤル発信【軌跡】 村添たばさ @tama_3922

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