管理人・ザ・雛人形

まめでんきゅう–ねこ

雛人形のヒナ

こんにちは、私は雛人形のヒナと申します。ひな祭りの時のみ魂が宿り、とある一家のひな祭りを最高のものに仕立て上げる。


それが私の役割。

さぁコーヒーでも飲みながら、どうぞ。



私の1日はある仕事から始まります。

それが、朝食の準備。私が勝手に居候しているこの一家は、ひな祭りという存在が頭の中から消えています。


3月3日ってなんの日だっけ?…てスマホで検索するほどにね。関心の薄さには、さすがの私も脱帽ですよ。


ですが脱いだ帽子はすぐに被ります。

祭りは食べ物が重要!ちらし寿司と金平糖で1日の始まりを祝福しましょう!


私は朝早く起きて、キッチンでそれらを作ります。

背が低いので届かないし、腕も短いので包丁も持てないし、私だけの力では何もできません。


なので、ここで私の権能けんのうを使います。魂を宿した人形は、凄まじい異能を使う事ができるんですよ!


この家のお母さんを洗脳し、包丁を握らせます。そして人参や玉ねぎを切断します。


次にお父さんを洗脳し、ご飯を炊かせます。朝ですから、やっぱりご飯ですよね〜!


その後、この家のガキ2人を洗脳して、物置にある金平糖を出させます。

朝から甘いもの食べた方が、脳が働くに決まっています!



さぁ出来上がり。では4人の洗脳を解いて、召し上がれ!


「なんでこんな料理作ったんだっけ」

「朝から金平糖…まぁ良いか」

「わぁい、ちらし寿司だぁ!」

「美味しー!」


喜んでもらえて嬉しいです。じゃあ私はその間、部屋の掃除をして雛壇を飾りましょう。


権能を用いて、掃除機を出しましょう。私はこの通り腕や足が短いので、掃除機を扱えません。


なので、お父さんを洗脳し掃除機を握らせます。

あら、まだ食事中でしたか。ですが洗脳している間は彼の意識は消えていますので、問題ありません。


ウィーーーーーーーーン


朝から聞くには大きすぎる音ですね。鳥の囀りや気持ち良い風がかき消されてしまいますよ。

まぁ良いや。


さてお母さん、まだ食事中かと思われますが、洗脳しますね。

雛壇を飾らせます。


次にBGMでも流しましょうか。もちろん選曲は『うれしいひなまつり』です。


ガキ2人を洗脳します。

そしてスマホで曲を検索し、再生!!


あぁ、良い曲ですね。心が落ち着きますよ。

喧騒な社会から、この曲を流すだけで離れられるような…。



お、掃除も飾りつけも終わりましたね。

では洗脳を解いて、しばらくは休憩しましょう。






夜になりました。

料理のお時間です。


はまぐりの酒蒸しを、洗脳したお父さんとお母さんに作らせます。

ガキ2人には菱餅を準備してもらい…菱餅は戸棚にあるかと思いますよ多分。



え、無いの?じゃあ、どこにあるんだ…。


あ、やべ、間違えた!あ、失敗した!

はまぐりの酒蒸しがぁ!


クソッ、計画が狂った。あーもうダメだ。

ハァめんどっ。


萎えたので寝ます。

おやすみ。



「あれ、なんでこの料理作ってるんだ…しかも失敗してるし」


「なんか今日はおかしな事が多いよね。気づいたら掃除してたり、料理作ってたり。

もう今日は寝ようか」


「そうだねパパ、ママ」

「私なんか怖いー」




ハァ、こんだけ尽くしてあげてるのに、なんか怖がられてるの…なんか、なんか…。


怖がらないで、嫌わないで、ホラーとか思わないで…。


私は皆さんに、ひな祭りを楽しんでもらいたいだけなんですよ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

管理人・ザ・雛人形 まめでんきゅう–ねこ @mamedenkyu-neko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ