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第17話
その後、小野寺の指揮で部屋の掃除を始める3人だった。
だが、散らばったゴミを分別し、埃を掃き出し、床を水拭き、空拭きをしたところで力尽きる。
なにせ、部屋を汚染するゴミの量が半端ない。
とりあえず、キッチン、浴室寝室などの生活に必要最低限のところだけは使用できる状態にした。
くれぐれも明日は指定されたゴミを出してから、出勤するように!
そう何度も力説した小野寺は、一旦、自宅に戻った。
きれい好きなヤツには、ここは過酷な状況らしい。
自分のテリトリーに戻って英気を養うとのこと。
だが、今夜のことで楓だけでは不安だと感じたらしい。
明日の夜には着替えを持って、ここへ来るとも言っていた。
葵は、大いに不満だ。
楓と2人きりでいたいのに、あの助手が何かと理由をつけて邪魔してくるからだ。
そうだ。
明日、小野寺に会ったら様々な嫌がらせをしてやろう。
そうしよう。
葵の思考はその事で埋められていた。
自然と力の入る掌に柔らかな感触がする。
「ん……なーに、葵。くすぐったい」
「すみません」
腕の中には微睡み中の楓がいる。
一緒に寝たいと言ったら、楓はアッサリと了承した。言うだけ言ってみるものだなと葵は思っていた。
「起こしてしまいましたか?」
「んーん。うとうとしてだけ」
それは、やっぱり起こしてしまったのでは?
指摘するか謝るべきか迷っている内に、楓は眠ってしまった。
この無防備極まりない今の状況に、葵は下心がないわけではない。
だが、わずかに漂う鼻をつく腐臭に微妙な感じで理性を刺激される。
不本意ながら小野寺の言う通りだった。この空間では、甘ったるい雰囲気にはどうしてもなれない。
葵は男らしく諦めると、楓の身体をさらに抱き寄せた。
多少ネギやらニンニクの匂いがするが、そこは無理矢理にでも外へ閉め出す。
彼女の香りを感じつつ、明日こそ楓を独占できることを願って。
葵は、意識を手放した。
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