【モニかな外伝】とある新人メイドの日誌 ~私のアイドル、モニカさま~

第1話 おはようございます

 みなさま、はじめまして。

 わたし、ナンシーともうします。

 よろしくおねがいします。


 おしろにおつかえしてまだ1ねん未満みまん、15さいのメイド見習みならいです。


 田舎いなかからてきてみぎひだりからず、いまだご迷惑めいわくをおかけしておりますが、先輩せんぱいがたささえられ毎日まいにち懸命けんめいにおつとめしています。


 そんな私ですが、かけまくもおそおおい、とてもとてもかわいらしいお方推し出会であってしまいました。


「モニカでつ! 5なのでつ! むふん!!」


 モニカさまはすえひめさまであらせられます。

 お城の、いえこの王国おうこくのアイドルといっても過言かごんではない、地上ちじょうりた天使てんしとも形容けいよう出来できるほど可憐かれんでいらっしゃいます。いつも笑顔えがおみな祝福しゅくふくさずけていらっしゃいますが、どこへんでいくか分からない、かぜかれるタンポポの綿毛わたげのようなお方でもあります。


 本日ほんじつはなんと、そんなはな妖精ようせいのようにあいらしい姫さまのおそばにお仕えすることになりました。モニカさまをとおめにもでるだけで私はおつおめをがんばれていたものですが、どうしましょう。


大丈夫だいじょうぶわたくしもサポートしますから」


 モニカさまきメイドの班長はんちょうエミリーさまからは、いつもだまりのようなあたたかいはげましをいただきます。今回こんかいも、かしこまらず、自然しぜんに、されどモニカさまの自由じゆう行動こうどうからはなさないようにとのご指導しどう頂戴ちょうだいしましたが……。


 わたしのアイドルにお仕えできるなんて!


 お役目やくめおおせつかったときからドキドキとむね高鳴たかなり、よるもほとんどねむれませんでした。

 それでもあさます。

 緊張きんちょう深呼吸しんこきゅうおおかくし、エミリーさまや先輩方とともに、いざモニカさまの寝室しんしつへ。


「モニカさま。おはようございます」


 モニカさまはもうお一人ひとりでおやすみになられていますが、お返事へんじありません。


失礼しつれいします」


 エミリーさまはこたえがなくとも、なかへ。

 よろしいのでしょうか?


「モニカさま、モニカさま。朝ですよ」

「うーん……。あと、5ふん……」

「では、そのあいだにおかおあら用意よういなどいたしましょう」


 エミリーさまも先輩方もれたご様子ようす

 私は皆さんのお手伝てつだいだけで右往左往うおうさおう

 ちらっとモニカさまを拝見はいけんすれば、なんとおかわいらしい寝顔ねがお

 ふわふわのお布団ふとんつつまれ、まるでひなどりのようむにゃむにゃと。

 自然とみがこぼれてしまいます。


「さあ、5ふんちました。モニカさま、きましょうか」

「もう5ふん……」

「あらあら。でも起きないとパンやスープがめてしまいますよ」

「それはいけまてん!」


 モニカさまのご起床きしょうです。

 布団をげ、文字通もじどおきられました。

 いしんぼうさんですね。

 すこし緊張がほぐれたがします。


「おはようございまつ! きょうもありがとうございまつ!」


 寝起ねおきも元気げんきなモニカさまです。

 なんともったいないお言葉ことばでしょうか。


「それでは、あとはおねがいします」


 朝の支度したくわると、私一人、のこされてしまいました。

 ご、ごあいさつ、です!


「ナンシーたん? あい! よろしくおねがいしまつ!」


 ああ、モニカさまから名前なまえんでいただけるなんて!


 こえうわずってあせをかいてしまいましたが、モニカさまはお気になさいません。未熟みじゅくな私などにもまぶしいほど笑顔をけていただけます!


 なおして。

 教室きょうしつへ行きましょう。


「あい!」


 モニカさまはおさないながらも姫君ひめぎみであらせられるので、勉学べんがくにもはげまなければいけません。側控そばひかえの私も教室へと共におもむき、そのサポートをするのも大切たいせつなお仕事しごとになります。


 モニカさまは気取きどらず、私のを。

 やわらかいお手てで!

 にぎっていただけました。

 ふんわりすべすべ、まるで極上ごくじょうしろパンのようです!


 いけません!


 モニカさまを安全あんぜんみちびくことこそ大事だいじです。

 うっとりしていては御用ごようたせません!


「ケルスにもおはようございまつしまつ!」


 ケルスさんはモニカさまの一番いちばんのおともだち、おおきなしろいわんこさんでいらっしゃいます。

 モニカさまの寝室のおとなりにケルスさまのお部屋へやがあります。


「まっててください」


 モニカさまにいわれ、お部屋のそと待機たいきです。


 ……。


 一向いっこうてきてくださいません。


 ……ここはエミリーさまにならって。

 失礼します。


 たいへんです!

 モニカさまがケルスさんと一緒いっしょえてしまわれました!


「お勉強べんきょうがおきらいなモニカさまですから、よくよく見張みはっていてくださいね」


 エミリーさまからご注意ちゅういけていましたのに。

 かえしのつかない失態しったいに、きました。

 モニカさまがあまりに素直すなおでおかわいらしく、がって……、あ、いえ、すっかりだまされて……、それも失礼しつれいですが! と、ともかく、逃亡とうぼうあそばされてしまいました。


 私一人ではおろおろするばかり。

 どこへかれたのか、行方ゆくえのあてもありません。


こまったらなんでも相談そうだんしてください。一人でかかまないでね」


 エミリーさまのお言葉ことばをふとおもし、私はいきせきエミリーさまのもとへいそぎました。

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