第39話

「ん、美味しいじゃん」





ピンクのマカロンを一口齧った直人は、少しだけ意外そうに、瞼をまたたかせて。


ラズベリー?と訊ねてきたので、そうだよ、と答えた。





「こっちの青いのは?」


「ブルーベリー」


「どっちもベリーかよ」


「文句ある?」


「ないです美味しいですありがとうございます」





よろしい、と笑った私を、直人はすごく穏やかな、優しい瞳で見つめる。



さっきまでの獰猛さはどこへやら。


なんて調子に乗って言ってしまえば、次は逃がしてもらえる気がしない。



余計なことは言わないに限る。





「お〜、ブルーベリーも美味い」


「愛情たっぷり込めたからね」


「通りで砂糖たっぷりなわけだ」





嬉しそうにマカロンを頬張る恋人を、軽く蹴飛ばす。


痛って、と非難の視線を投げてきた直人の手から、食べかけのそれを奪い取り、自分の口に放り込んだ。





「あー!俺の!!」





…甘い。


甘さ控えめにしようと思って、ガナッシュの代わりにジャムを挟んだのだけれど、試作品よりかなり甘かった。



砂糖を入れ過ぎたのか、ジャムが多かったのか。


今となっては分からないけれど。





「甘過ぎたね。ごめんね?」


「いや、美味いよ。これくらいの甘さでちょうど良い」





かわい子ぶって上目遣いをすれば、真剣な顔で答えてくれた。

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