第29話

なぁにが惚気だ。


私とは比べ物にならないくらい、エグい話をしておいて。





「ちょ、、ストップ。ギブ」


「聞くって言ったじゃん」


「想像以上に刺激強すぎ」





ぱたんと床に倒れた私を、ベッドの上から優奈が覗き込む。


心なしか、誇らしげな表情を浮かべて。





「ま、お子ちゃまはお子ちゃまらしく遊園地デートでも企画したら?」


「無理だよ。ナオ人混み嫌いだもん」





それに初デートで行くと別れるって言うし。


ぼそりと呟いたはずの一言を拾った優奈は、そっちが本命の理由か、と楽しそうに笑った。



くそ、絶対からかわれるから言うつもりなかったのに。


当の優奈は一通り笑い終えたあと、さらりと答える。




「平気でしょ〜、付き合い自体は長いんだし。むしろ今まで一緒に行かなかったことにびっくりだよ」


「だから、ナオが人混み嫌いなの!」


「はいはい。じゃあお家デートでもすれば?」


「またそうやって適当なこと言って」


「どうせ付き合いたてはどこ行っても楽しめるよ」





それもそうか。


…じゃなくて!



どうせならどこか特別感のあるデートにしたい。


だってこれ、ほとんど初デートだもん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る