第3話

―――近い。


ていうか最早、重い。



漫画を読みながら次第に姿勢を崩していった悠聖は、私の肩に背中を預けるようにしてもたれかかってきて。


すぐ近くにある薄茶色の頭を横目に睨みつけてみたけれど、悠聖はちっとも動く素振りを見せない。



まあこれくらいなら、と目を瞑ったのも束の間、私の脚に頭を乗せて来たものだから驚いた。




「えっ」


「えっ?」




びくりと脚を動かせば、目を丸くした悠聖が私を見上げる。



なんであんたまで驚いてるの?


もしかして、これって普通なの?




「なに?」


「なに、って…」




偉そうな瞳に見上げられて、言葉に詰まる。



男の子はみんなマザコンでシスコンだって聞いたことがあるけれど、悠聖も家ではこうなのかな。


悠聖ママやお姉ちゃんの里香ちゃんに、膝枕してもらってるのかな。


私は悠聖のママじゃないけど、お姉ちゃんとか妹くらいのポジションみたいに思われてるのかしら。



―――なら、別におかしくはない、のかも?





あまりにも当然みたいな顔をしてそこに居座る悠聖に、自分の中の常識が覆されたような気持ちになってきて。



まあ、いっか。


どうせ悠聖だし。


傍若無人なのは昔からだし。



諦めて強張っていた脚の力を抜けば、悠聖は満足そうに目を閉じる。


猫みたいだなあ、と思った。




「男の子はマザコンって話、本当なんだね」


「なんの話?」


「家でも悠聖ママに膝枕してもらってるんでしょ?」


「なんの話!?」

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