第27話

久しぶりに古めかしいドアノブを回せば、明るい笑顔で「いらっしゃいませ!」と西条さんが出迎えてくれた。



「こんにちは、西条さん。」



「こんにちは!あ、あの、後ろの方は…?」



「ああ、紹介遅れてすみません。俺の父です。来てみたいと言っていたので、連れて来ました。」



「そ、そうなんですね!初めまして、西条と申します!」



「初めまして、星山誠司です。」



父さんは少しキツめの声を出しながら案内する西条さんを採点するかのように見続ける。



「……ちょっ、そんな睨むなよ。」



「未来のお前の嫁になるかもしれないんだぞ。見定めるのは当然だ。」



「おい、まだ告白すらしてないし、そんな顔やめろって。」



コソコソと、彼女に聞こえないように父さんを咎めながら席に着く。



「……お前はあの子の何がいいんだ?」



「だーかーらー、今日は店を楽しむことだけにしてよ。彼女のこと睨んだり評価したりすることは、やめてくれ。失礼だろ。」



「いやだからって、」



「うるさい。」



傍から見たらかなりの痴話喧嘩に見えるかもしれないので、なるべく小声で父さんを黙らせる。彼女に聞こえてしまったら、悲しませてしまうかもしれないからだ。



そんな風に考えていたら、いつの間にか来ていた彼女が少し怯えた、作ったような笑顔を向けながら注文を取りに来た。



「あ、あの、ご注文は如何致しましょうか?」



「あ、!西条さん、すみません。いつものを2人分お願いします。」



やばいっ、聞かれてたら、居心地悪くさせてしまう…。



「かしこまりました!少々お待ちください!」

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