音楽が溢れているそのホールの客席は今日も満席。
「さあ、次ね。楽しみだわ」
演奏会に来ているお客様の一人、四十代後半の綺麗な女性が楽しそうに呟く。
「そんなに次の曲が聴きたいの?」
隣に座っている若い男性が可笑しそうに笑いながら彼女に訊く。
「えぇ。とても好きなのよ、この曲」
「そうなんだ。でも皆、小学生の頃には弾いたことあるよね」
「何言ってるの。あれとは比べものにならないわよ」
「え、ごめん」
「原曲を聴いてから言ってよね。自分が情けなくなるくらいすごいんだから」
「すみません。ちゃんと聴きます」
「ふふ、そうね、ちゃんと聴いてね」
なんて平和な会話なんだろうか。
二人が笑いながら言い合っているとアナウンスが流れピアニストがステージを歩く。
「あ、ほら始まるわよ」
彼女はきらきらとした目でステージに食いつきその曲に聴き入る。
ピアニストはそれをとても綺麗に奏でる。
そして彼はそれに見惚れるのであった。
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