第14話

『ホントにもう帰っちゃうの?』


『うん…』


『そっか、なんか寂しい…』


『また会いにくるから。』


『うん……』


もっと優斗と一緒に居たいよ。

あんなにも会いたくて会いたくてやっと会えたのに。


『また会いに来る』って言っても遠いんだもん。そんな簡単に会える距離なんかじゃないもん。


私は優斗をポケットに詰め込んで持って帰りたいくらいだった。


東京行きの新幹線がホームに着く。


『優斗…』


私は離れたくなくて優斗の胸に顔をうずめた。

優斗はそんなあたしを抱きしめてくれる。

暖かくてホカホカ。


『愛香をずっとぎゅってしてたいよ……』

『もっとぎゅってしてて……』


このまま優斗の胸の中に溶け込んでしまい。


新幹線の発車を知らせるベルが鳴る。

なのに、優斗はまだ私を抱きしめてくれてる。


『乗らないの?』

『やっぱり次の新幹線にする。』


そうやって1本、また1本と新幹線を見送った。


『愛香…』


優斗の唇が、そっと私の唇に重なった。


触れたか触れてないかわからないほどのかすかなKISS


だけど、私の胸の奥、キュンキュンして痛いよぉ


『優斗…』

『ん?…』


『愛してるからね』


私は優斗の腕の中で包まれながら耳元でささやいた。


そこに愛があるかなんてわからない。


いくらチャットやメール、電話なんかで話してるうちに心が惹かれあったっていっても、実際に会ったのは今日が初めて。


どんなに好きな気持ちが芽生えてても、愛があるかどうかなんてわからない。


でも、


それでも、私は……


優斗には『愛してる』

その言葉を伝えずにはいられなかった。


夫になんてそんな言葉、言ったことなんてなかったのに。

何故か、優斗には言いたかった。


ほんとにその時は何故なのかわからなかった。


今思えば、『愛してる』を伝えずにはいられなかったのは、優斗が私の人生で特別な人だったからなんだと思う。


優斗を乗せた新幹線が涙でゆがんで、そして見えなくなっていった。

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