第13話 スタート前

 ここからしばらく、英語・仏語は『』で台詞を囲むことにします。日本語で台詞が書いてあっても外国語ということでよろしくお願いします。

--------------------


 私たちは今ナイロビにいた。私アフリカ舐めてたわ。梅田界隈以上にビルが立ち並んでて、広い道路も舗装されてた。

 それらビルが建ち並ぶ大都市の西側郊外の空き地に、レースのスタート地点が設営されていた。

 クソ暑い中大きな天幕の下で、車両検査とバッテリーとモーターへの封印作業が行われていた。


 今、目の前で教授が以前に予想した通りのことが起きていた。

『核電池も小型原子炉もダメに決まってるだろ! 環境に優しいの意味わかってんのか! だいたい、どうやって持ち込んだんだ!』

米軍の車愛好家プライベートチームが吊るし上げられていた。

 どうも米軍基地を経由して持ち込んだらしい。

 サーベイメーターがピーピー鳴っている車を遠巻きに見ていると、軍服を来た人達が現れて、車とチームをドナドナして行った。


 私達のマイクロバスの番になった。私、フランス語通訳頑張る……。

『で、サポートカーじゃなくって、レースカーは?』

いきなり文句つけられた。

『これです。これはサポートカーではありません』

『冗談は分かったから、早く本物を出せ』

『いや、本気です。これが私達のラリーカーです』

『レース舐めてんのか!』

この人怖い。私、勇気を振り絞って言った。

『検査と封印をお願いします』

『……ソーラーカーね。で太陽光パネルは?』

『……これです』

私は、マイクロバスに貼り付けたオモチャ用太陽光パネルを、嫌々ながら指差した。

『……なぁ、嬢ちゃん。いい加減真面目にやろうや』

検査係の人、顔面真っ赤でプルプル震えてる、こめかみに血管浮き出てる……。私は教授を振り返ったが、教授達は笑い転げてるだけで助ける気がなさそうだった。


 暑いわイラつくわで、私の中で何かが切れた。

『おい、くそ親父。暑いんだからとっとと作業しろや。太陽光パネルのサイズに制限はなかっただろうが。モタモタしてっとケツ蹴り上げんぞ! あん?』

カッとなって思わず、Fワード満載の汚い言葉で返しちゃったわ。研究室のメンバーが後ろで固まってた。私のイメージが……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る