stage10 失敗したからといって私は帰れる訳ではないのだから
公園で倒れていた天使は、目を開けて呟いた。
「あんな魔法を使う奴がいるなんて、データにないわ」
流れるような綺麗な動作で立ち上がると、彼女は転移魔法を展開した。エドワード達を追うことにしたのだった。
「しかしながら、若かったわね・・・・・・」
あんな子供を何故我らが天使長は探せと言ったのか、彼女には今一つ判じかねた。転移魔法の中に入ると、まだ不機嫌そうに魔法陣を発動した。
「捕まえるまで帰れないわ」
彼女は姿を消し、少し悲し気な声が最後に残った。
フェリが空を見上げた。夜も近づき、空が暗くなってきていた。
「追ってくることは考えられるの?」
「大分離れているし、ここにいる限りはないとは思うんだけどなあ」
天使の話か、とコウは気づいた。心配になって口を挟む。
「あの天使の女の人、どうやら俺を探しているみたいでしたね」
「ああ。何かしたとかじゃないんだろう?」
エドワードに尋ねられ、コウは答える。
「初対面ですよ」
ふむ、とユリシールが考え込んだ。そのまま階下に行ってしまったのでコウが首を傾げていると、エリーゼがため息をついた。
「珈琲で酔ったから寝に行ったのよ」
「えっ?」
ふむ、とは何だったのか。俺のことを考え始めたのではなかったのか、と内心で突っ込んでしまったコウなのだった。
「どうする、もう遅くなったけど、飯でも食っていくか?」
「え、良いんですか」
「何作ろうかなあ」
「私オムライスが良い」
「フェリの希望は聞いてないよ・・・・・・」
皆も一階に向かった。階段を降り切ったところで、エリーゼがコウを振り向いた。
「泊まっていく?」
「えっ」
気軽に問いかけられ、少々驚いたコウだったが、抱き抱えている猫が満足そうに喉を鳴らすのでここは甘えて泊まらせてもらうことにした。どうせ家に帰っても誰かいる訳ではない。
「良いですか」
「良いよ〜、寝るところはエドワードのベッドを空けてもらうから」
「俺はじゃあソファで寝るよ」
「すいません」
「天使のことは明日の朝考えよう。俺はちょっと今晩対策を練っておくし」
「ありがとうございます」
コウは皆の優しさに感動した。
明日早くここを出て、登校する時カイに会ったらどうにかして何かは言おう、と思った。全て話せなくても、心配しているに違いないあいつに、礼は言おうと。
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