なんと凄まじい、そして楽しい世界を覗きこんでしまったのだろうと、読んでいる途中から嬉しくなってしまいました。
「ひなま釣り」という謎の儀式に出かけてしまったお父さん。お父さんは釣ってきた「ひなま」を捌き、そこから様々な名前のついたものを作り出していく。
ひなまつりに関するワードの数々が、どんどんグロい何かに変換されていく!!
「三人環状」や「五人生やし」、それに「皮脂餅」。
読み進めるごとにじわじわと来ます。
三千字くらいの短い中で、凝縮された一個の世界観。それでいて「釣り」というニッチなシチュエーションからぐいぐい読者を引き込んでくれる構成。
テンポよく次々と「ひなまつり」関連のワードがあらぬものへと変換されていくので、短い中でとんでもない満足を覚えさせられることになりました。
ダークな雰囲気もあるんだけれど、ひなまつりイメージとのギャップがまた楽しい。
是非とも読むべしと強く推したい、最高に面白い作品です。
ジャンル、ホラー。
おお、そうかそうか……タイトルが駄洒落っぽいからギャグ作品かと思ったけど、違うのか……。
そしてレーティングにしっかりと「残酷描写有り」「暴力描写有り」、ご丁寧にタグにも「残酷注意」「グロテスク注意」「悪趣味注意」と再三の注意。
ひとこと紹介の「ひなまを釣って」という奇怪な言葉。
よし、覚悟したぞ。
これはそういう作品なんだ……。
意を決して読んでみますと、なんとまぁ、覚悟はしていましたが常識的でまともな箇所なんて一欠片もありません。
あれです、言ってしまえばSIRENの異界と化した羽生田村にでも紛れ込んだかのような異常さ、異質さ。
これを映像なしの文字媒体で伝えるというのも中々すごいことです。
そして読んでいて徐々に予想がついていくのですが、この登場人物らは……。
そしてその最後の突き放したかのような訳の分からなさ、まさしく怪異といった感じです。
これは読まなきゃ伝わりませんので、是非とも読んでください。
「ひな祭り」ではなく「ひなま釣り」……この発想からしてすでに唯一無二です。私が逆立ちして耳から脳髄を絞り出しても(作品に合わせて少しグロテスクな表現にしてみました)、こんな発想は生まれないでしょう。
読みはじめれば、「ひなま」という謎の生き物を使った、世にもおぞましいお祭りの準備が……。
「きんびょうぶ」「ぼんぼり」「ひしもち」「しろざけ」といったおなじみのことばも、見るからに禍々しい漢字に変換されています。どのような漢字かは本編を読んでのお楽しみということで。
不気味で凄絶で、でもそのなかにこの世ならぬ美が妖しく光る……短いながら、作者様独自の世界にどっぷり浸れる幻想ホラーです。