これは勇者の剣です!(断言)
相有 枝緖
01 プロローグは良くないらしいけれどもプロローグ
大陸の半分を占めるメンシュ王国は、数百年ぶりに未曽有の危機に陥っていた。
大陸のもう半分を牛耳る魔界からやってくるといわれる魔物が、徐々に増えてきたのだ。
気づけば、日々討伐する数が十年前の五倍以上になっていた。
数百年に一度起こる魔物の大発生のとき、メンシュ王国が治める
おとぎ話にもなっている勇者は、岩に突き刺さった『勇者の剣』を引き抜き、魔物を次々と討伐し、魔界にいる魔王を倒して平穏を勝ち取るのだ。
ちなみに、伝承やおとぎ話、絵本など様々な形態で伝わっている勇者の伝説にはいくつか種類がある。
ほぼ史実だろうと言われているのが魔物の大発生の原因となる魔王を倒す話で、子ども向けに改変したのだろうというのが魔王と話し合い魔物を共に倒す話。エンタメ化されたとみなされているのは魔物に困っている魔王を勇者が救う話、勇者を見いだした魔王が師匠として勇者を鍛える話などだ。
しかし、魔界との交流はないに等しいため、魔王と仲良くなる系統の話は子どもへの「誰とでも仲良くしましょうね」という教訓を含むためのものだろうと
考えられている。
とにかく魔物の大発生という危機に対処するため、メンシュ王国は勇者を募った。
王城の前の『勇者の剣広場』にある、大きな岩に突き刺さった『勇者の剣』を引き抜いた者こそが勇者なのだ。
勇者はおとぎ話でありながら、生きた伝説であった。
はじめは、比較的魔力容量の多い王族や貴族の中から探そうとした。
勇者伝説の中には、剣を使うとともに大規模な魔法を放つという話もあったからだ。
まずは若い貴族の男性をしらみつぶしに探した。
しかし、一人も剣を引き抜けなかった。
次に、貴族の当主や引退した者といった年齢層が高めの男性と、未成年の男児にも手を広げて調べた。
しかし、一人も剣を引き抜けなかった。
その次に、もしかすると女性の可能性もあるかもしれない、ということで、令嬢や貴族の奥方に試してもらった。
しかし、一人も剣を引き抜けなかった。
二年かかって赤子以外の全貴族が試したものの、誰一人として引き抜けなかったのだ。
そこで、今度は平民から勇者を募ることになった。
題して『勇者の剣引き抜き大会』である。
若干緊張感がないのは致し方ない。
魔物の増加が緩やかであり、どうにかこうにか現状で対応できているためだ。
とはいえ、今後はわからない。
『勇者の剣引き抜き大会』は年齢も男女も問わない、毎週開催される大会だ。
平民には農家をはじめとした生産職の次に兵士や冒険者が多い。
なにせ、大発生する時期でなくとも常に魔物があちこちにいるのだ。
人を無差別に襲う魔物を倒す職業は、人の住む場所には必要不可欠である。
そのため、平民の中では『冒険者の中に勇者がいるらしい』という話がまことしやかに広まっていた。
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