第3話

吹き渡る風は緑の竹林を大きく揺らし、ざわざわと音を立てさせる。

それは海に広がる巨大な波のうねりにも似ていて、私は一人静かにこの竹林に佇むのが好きだった。

公園の中にあるほんのネコの額ほどの竹林だったけれど、ここへ来ると、私はただの生き物になり、仕事のストレスも溶け込み、忘れられる。

今日もバイト帰りにぼーっと座り込んで高くそびえる竹の隙間から暮れゆく空を眺めていた。

のどが渇いたので「富士山の天然水」を使ったミネラルウォーターを口に含もうとしたとき。

ごうっ

と音を立てて風が吹いた。

思わず目を閉じた瞬間に手が滑り、地面に少しこぼしてしまう。

(まあ、いっか。別に床にこぼれたわけでもないし。)

その時、どこからか小さな声がした。

「もしもし、もしもし。」

静寂を破られたことに少しむっとしながら、あたりを見渡したが人影はない。

空耳か、と思い再び直立する竹を見上げたとき。

「もしもし、あなたわたしを踏んでます。」

足元から声がした。

「えっ、わっ。すいません。」

知らない間に寝ている誰かを踏みつけたのだろうか。

慌てて飛びのくと、枯葉の隙間からひょろひょろと細長い魚が出てきた。

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