「笠地蔵」をもっとハッピーエンドにしてみた

菊池ゆらぎ

第1話

菅笠を作って暮らしているおじいさんは、正月の餅を買うために、笠を五つ持って町に売りに出かけましたが、さっぱり売れません。


そのうちに日が暮れて雪も降ってきたので、しかたなく戻ってくる途中、野原に立っているお地蔵さまに雪が積もっているのを見て、持っていた笠を全部かぶせてあげました。最後のお地蔵さんには自分のしていたホッカムリをしてあげたのです。


「まあ、良いことをしましたね」

笑顔で出迎えたおばあさんですが、内心がっくりです。正月を迎えるのに餅ひとつないなんて…

外を見ると雪が止んでいます。

意を決して立ち上がりました。


そして酒を飲み出したおじいさんを置いて、傘地蔵の所へ行き、傘を脱がし始めました。

お地蔵さんたちは

「おい、何をする!」

と、口々に言いましたが

「これは売りものなんだよ!もう雪も止んだじゃないか!」と、おばあさんは意に介しません。


最後のお地蔵さんはおじいさんのホッカムリをしていましたが、引きつった笑顔で、

「売りに行くならご一緒しましょう」と言いました。


町の人たちはお地蔵さんとおばあさんにたまげてしまいました。

「ありがたや」

「ご利益があるかも…」

皆、菅笠を買ってくれ、お金の他に、沢山の食べ物を差し出すのでした。


おばあさんとお地蔵さんは意気揚々とおじいさんのもとへ帰りました。


こうして、老夫婦はお地蔵さんたちと楽しい大晦日、そしてお正月を迎えることが出来ました。


そして菅笠を売りに行く時は必ずお地蔵さんが一緒に付いて来てくれることになりました。


めでたしめでたし。

(終)

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