姪っ子にひなあられで餌付けされる女子高生探索者の話

川野マグロ(マグローK)

まさか私が餌付けされる側だなんて

 今日はひなまつり!

 姪っ子ちゃんにプレゼントをあげられるよう。ダンジョンに出現する限定モンスターを討伐してあげるんだ!


 と今朝の私は意気込んでいた。

 学校帰りにすぐダンジョンへ向かえるよう準備万端で家を出た私は、何の成果も得ることができなかった。


 今日のために用意したお雛様装備も萌えカス寸前だし、なんでいつもこうなっちゃうんだろう……。


「手に入ったのは謎のぼんぼりだけ。これでどうやって姪っ子ちゃんを喜ばせばいいのさ」


 普段より荷物が重く感じられる中、私がとぼとぼと歩いていると、玄関の前で手を振る小さな影が見えてきた。


「おねーちゃん!」


 健気に私に向かって走ってきてくれるのは、半月くらい前からうちで預かることになっていた姪っ子ちゃんだ。

 何故だか初日からすっごい懐いてくれて、帰ってくるのを愛犬のように待ってくれるかわいい子。

 いつも今日みたいに私に元気を振りまいてくれるのに、私はと言えばこのザマだ。


「おねーちゃんかっこいい。どうしたの?」


「か、かっこいい?」


 ボロボロになった私の姿を見て、目を輝かせる姪っ子ちゃん。


 何が琴線に触れたのか口を大きく開けて、わーっと感動したように見上げてくる。


 痛いよ。その無邪気な視線は今の私には直視できないよ。


「今日もいいところなしだったんだよー」


「あれ? そうなの?」


「そうなのー。ごめんねー。お土産これしかなくって」


 謎のぼんぼりを前に姪っ子ちゃんは不思議そうに首をかしげた。


「ううん。おみやげありがと。ぎゅーってしてあげる」


「うんうん。ありがとう」


 ああー。

 今日こそはいいところを見せないとって思ってたのに。


「そうだ。これ分けてあげる。あのね。あたしの宝物なの」


「宝物?」


「これ! ひなあられって言ってた」


 姪っ子ちゃんのぽっけから出てきたのは何気ないひなあられ。

 多分お母さんが渡してくれたのだろう。

 それでも今はキラキラと光って見える

 大事なものだろうに、姪っ子ちゃんはためらいもなく私に差し出してきてくれた。


「いいの?」


「うん。おいしいよ」


「ママぁ」


「よしよし。おねーちゃん。ママですよぉ」


 うぅ。また甘やかされてるよぉ。

 私の方がお姉ちゃんなのに。


「ほら、立てる? お家に帰ろう?」


「うん」


 私はなぜか一回りも年下の女の子に手を引かれながら家に帰るのだった。

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