逆アイドル専属契約を結びました。タカナシ君は私だけの専属アイドル❤ いちばんっ、いちばんっ、だ~い好きっ💕
尾岡れき@猫部
小鳥遊君は逆アイドル専属契約を結びました。
アイドルグループ、
そんな子が、うちの高校に入るだけで驚きだ。でも、それ以上に――。
「うちの小鳥と逆専属アイドル契約を結んで欲しい」
マネージャーさんの一言に、僕は面食らう。隣で、渡さんはニコニコ笑顔を絶やさない。
「まぁ、意味が分からないと思うが、一から説明しよう」
「はぁ……」
うん、意味分からないよ。ファミリーレストランは貸し切り。周りはエキストラというこの状況。君のプライバシー保護はバッチリだ、とマネージャーさんはサムズアップするが、顔に『?』を浮かべるしかない僕は悪くないと思う。
「まず、
「人並みにはありますが?」
クラスに芸能人がいるんだ。視線ぐらい向ける。
「それだ、そのスタンスがむしろ良い。単刀直入に言うと、小鳥は君に一目惚れをした」
「ふぁぁっ?!」
「ぽっ//」
「私も母親だ。本来なら、小鳥の恋を応援したいところだが、今をときめく〝LLL〟のメンバーでセンターだ。そう簡単に許容できない」
マネージャーさんはママだった。まぁ、良い。それは兎も角――。
「はぁ……」
いや、アイドルなんだから、恋愛禁止。以上、終了。これで良くない?
「テレビで観る小鳥は破天荒に見えると思う。だが、実際は――」
そんなことはなく、繊細だと?
「さらに輪にかけて、破天荒だ」
「……へ?」
「正直、明日にはアイドルを辞めると言い出さないか心配だ」
「もぅ、ママ。明日なんか、待てないよ。今すぐ」
「はひ?」
思考が追いつかず、固まった僕は悪くないと思う。
「そういうワケだ。今はまだ落ち着いているから良いが、ストーカーにもなりかねない。アイドルグループ・センターが、一般人をストーカー。週刊文秋もビックリの文秋砲直撃のネタすぎる」
「いや、誰だってストーカーはダメでしょ?!」
渾身のツッコミにも、何の反応も見せないエキストラの皆さん。本当に良い仕事してるよ。
「そこで、だ。苦肉の策が、逆専属アイドル契約なのだ。なに、そんなに難しいことじゃない。我が社のアイドルとして専属契約を行い、小鳥はファンとして登録する。アイドルとファンの関係性、これは絶対に崩させない。小鳥には、今はこれで満足してもらおうと思っている」
名案だろ? とドヤ顔するの止めて欲しい。
「……ちなみに、何をするんですか?」
「良い質問だ。君には、あくまで小鳥のアイドルとして接してもらう。そうだな、例えば握手会やサイン会、小鳥のためにライブをしてもらう」
「いや、僕は音痴で……」
「音痴なアイドルだっている。問題は上手い下手じゃない。
「うん、重要」
嬉しそうに渡さんが、微笑む。いや、本気? マジでマジ?
「マジ」
「喜んでいるところ悪いが、小鳥。節度ある対応を求むぞ? 弊社の専属アイドルだ。小鳥遊君の前では、小鳥は一ファンでしかない」
「握手は、良いでしょ?」
「握手会なら、な」
「ハグは?」
「却下」
「むー。チューは?」
「不同意わいせつ罪で、即逮捕」
「膝枕~!」
「本人同意のイベントならあり得るが、可能性は低い」
「枕営業っ!」
「それは可」
「不許可だよっ!」
ダメでしょ、そんなの!
「……というわワケだ。小鳥は歯止めがきかない。ある程度、契約で縛り健全な関係を保ち、ゆくゆくは私のことをママと呼んでくれたら良い」
「呼ぶわけないでしょ――?」
僕の荒ぶる声は、高速で打たれた電卓の数字の前に、フェードアウトしていく。
「え? 本当? これ、月額?」
「
「マジ?」
「本気と書いてマジ。マジでマジでマジ」
「う……」
「さぁ、小鳥遊君は私のことをなんて呼ぶのかな?」
「う……僕は屈しな……屈し……く……っ、ころ……」
「ん?」
「……ママっ」
金に目をくらんだ僕を笑うが良い。だが、金欠の高校生に、この金額。誘惑されない方がウソだった。あぁ、こうやって
「お前に、ママと言われる筋合いはないっ!」
「あんたが呼べって言ったんだろうがっ!!」
求婚時に立ち下がる、父親かっ! 思わず、突っ込みたくなるのを何とか抑えて。これ以上どう反応しても弄ばれる未来しか見えない。
と、そんな僕らを前にしても、渡はニコニコ笑顔を崩さない。
「契約成立だね❤ 懸巣君だから〝かっ君〟って呼ぶね」
無敵のアイドルスマイルを前にして、すっかり退路を塞がれた僕だった。
【つづく】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます