ひな祭り

クースケ

ひな祭り

 瑞野 春香は、このスーパー『響』のバイトを始めて2年目になる。高校を卒業してぬくぬくと実家にいるよりも、家族のいない県外で1人暮らしをしたかった。とはいえ、親に仕送りをしてもらって大学の費用やアパートの費用を払っているのだから自立とはほどとおい。それでもなるべく節約して、アルバイトも大学入学と同時にアパート近くのスーパーの求人の張り紙をみて、すぐ決めた。


高校出たての私を、職場の皆は手取り足取り親切に仕事を教えてくれた。そのせいもあって、今では店の中の一通りの業務はこなせるようになった。


「春香ちゃん、明日から実家に帰るんでしょ?いっぱい、家族に甘えてきなさい。これ、店のものだけど持っていってね」帰り際に、店長の明乃さんはミカン箱いっぱいに詰まった箱を手渡してくれる。


「そ、そんな。悪いです。こんなに‥」手軽に受け取った箱の重さに、少し揺らぐ。


「最初すぐ辞めるだろうと、皆で思っていたの。でも一生懸命にやってくれて,もう、2年になるのね。とても助かってるのよ。これは、ほんの気持ち」


◆◆

仕事が終わり予約していた夜行バスの中で、春香は売店で買った弁当を食べていた。


食べながら、いろいろ考えていた。


2週間前に私宛に妹ー百花からのメール。


「お姉ちゃんは、私がこんな風になったのをざまあみろって思っているんでしょ?」


返信は返さなかった。このメールはショックではあるが、距離を隔てていることで

そのことだけを考えてもいられなかった。

私は、子供の頃から妹の百花のことが苦手だった。明るくて機転がきいて、私とは正反対の性格だったから。大学を県外にしたのも、そのせいだった。


両親からの電話は、ちょくちょくあった。百花は地元の大学に通うことになったことや半年もたたないうちに引きこもりで学校にいけなくなったことも聞いていた。


(とても、複雑な気持ちだった。あの、活発な百花に何があったんだろうか。心配な気持ちはあったが、大学やバイトで忙しくしているうちにまた、時は経っていた)


(そういえば、ひな祭りの日にもよくケンカしたっけ)食後に明乃さんから貰った箱の中にひなあられがたくさん入っていた。それを、つまみながら思い出していた。


『百花、返事遅れてごめん。あなたは、私の大事な妹よ。お姉ちゃん明日帰るから、ひなまつりやろうね』閃いたようにメールを送る。



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ひな祭り クースケ @kusuk

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