第四話 待望のガチャ機能は俺に何をもたらすのか/焼肉食べ放題でフードバトル

 フードバトルを行う上でここで面白いことがわかる。


 制限時間だ。これはランダムで決まる。


 一時間だという場合とか50分、45分、30分とかの場合も。


 だが15分と出た時もあった。


 そういう意味で早食いなのか、大食いなのかで決まりが違う。


 だが今日は違った。


 バトルではない。


 俺はお腹が空くから食べ続けるのだが、ここで新機能がゲームアプリ『クイセン』につく。


 ガチャ機能だ。


 ガチャか。ゲームなら定番だな。


 ガチャを引くにはFP(フードポイント)が100必要だ。


 なかなかのポイントの高さだ。


 だがこれで何が出るのか見ものだ。ちょうど100ポイントあるから引いてみよう。


 さて何が出るかな?


 ガチャを引く。すると虹色の宝箱が出る。


【高級焼肉店ヒルオカで焼肉フードバトル対決の切符を手に入れた】


 なるほどそういうことか。


 ヒルオカは高級で有名な焼肉屋だ。


 そんなところでバトルをするのか。だがまだ使わないでおこう。


 本日は予行練習を兼ねて焼肉食べ放題とかで対戦フードバトルとかしたいな。


 ツーカルビでしたいな。


 スマホを取り出し、『クイセン』の対戦モードを開く。


「さて、どこに行くか……おっツーカルビがいいな」


 検索結果に表示されたのは『焼肉食べ放題ツーカルビ』という店だった。リーズナブルな価格ながら、肉質も悪くないという評判の店だ。


 歩いて十五分ほどの店だ。


「いらっしゃいませ!」


 元気のいい店員が迎えてくれる。


 さっそく席につき、『クイセン』の対戦モードを起動する。


『対戦相手を検索中……』


 しばらくして、マッチングが完了した。


【対戦相手:プロボクサー 篠崎烈(しのざき れつ)】


 プロボクサー……だと?


 まさかこんな相手が出てくるとは思わなかった。


 席の向かい側に座る男性がスマホを見ながら俺に目を向ける。


「お前が俺の相手か」


 見るからに鍛え上げられた肉体。無駄のない筋肉と鋭い眼光が、只者ではないことを物語っていた。


『フードバトル開始まで、カウントダウンを行います。3……2……1……スタート!』


 AIの無機質なアナウンスが響き、バトルが始まった。


 目の前の焼肉をひたすら食べる。カルビ、ロース、ハラミ……。


 だが、対戦相手の篠崎烈は俺以上のスピードで食べ進めている。


(やばい……このままじゃ負ける!)


 プロボクサーのスタミナは半端じゃない。しかも咀嚼力が強いのか、肉を飲み込むスピードが異常に速い。


 俺はどんどん差を広げられていく。


『対戦時間残り5分』


 やばい、このままだと負ける。


(スキルを使うしかない……!)


 俺は『クイセン』のスキル画面を開き、【胃袋拡張】のスキルを発動する。


『スキル発動:胃袋拡張 Lv.1』


 瞬間、腹の圧迫感が消え、さらに食べられるようになった。


(いける! これなら……!)


 俺は一気にスピードを上げ、肉を口に放り込み続ける。


 対戦相手の篠崎烈も驚いたのか、ペースを乱した。


『対戦時間終了!』


 AI審判がジャッジを下す。


『勝者、SHIN!』


「……勝った……!」


 ギリギリの戦いだったが、スキルの力でどうにか逆転できた。


 これでFP(フードポイント)も大幅に増えた。150ポイント増えた。


(よし、次はこのFPを使って、もう一度ガチャを引いてみるか……?)


 俺はスマホを手に取り、新たな戦いへの準備を進めるのだった。

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