第三話 お風呂上がりのフードバトル

 クイセンをプレイするようになってから、俺の食生活は一変した。フードポイントを貯めるために日々の食事を工夫し、フードバトルにも積極的に参加するようになった。


 そんなある日、食玲と一緒に近所の銭湯『極楽湯』へ行くことになった。


「しんしん兄ちゃん、お風呂の後のご飯って最高なんだよ!」


「まぁ、確かにな」


 銭湯の暖簾をくぐり、それぞれの風呂へ入る。俺はじっくりと湯に浸かり、疲れを癒やした。風呂上がりには冷たいコーヒー牛乳を一気に飲み干す。


 そして、食堂へ向かうと、そこには食玲がすでに待っていた。


「お兄さん、何食べる?」


「そうだな……ここはやっぱりがっつり行くか」


 俺は特製カツ丼を注文し、食玲は天丼を選んだ。


 すると、その時


「おや、君たちもクイセンをやっているのか?」


 不意に声をかけられた。振り向くと、30代くらいのスーツ姿の男が立っていた。


「俺は田所健吾。医者の卵で、現在大学院生だ。生態学にも精通していてね……まぁ、それはさておき、君たち、フードバトルをしないか?」


「え、俺たちと?」


「そう。君たちは二人いるんだから、ハンデとして俺一人と戦ってもらおう」


 田所はスマホを取り出し、クイセンの対戦申し込み画面を見せてきた。


「どうする? 食玲」


「やるしかないよね!」


 俺たちは迷わず『対戦承認』をタップした。


『対戦開始!』


 バトルのスタートと同時に、俺はカツ丼を一気にかき込む。


「うまい……けど、時間がない!」


 食玲も天丼を一口ずつ豪快に食べ進める。


 一方、田所は冷静だった。ラーメンを次々と注文し、驚異のスピードで完食していく。

 なかなかのスピードでラーメンを食べていく田所。


「ちょ、速すぎないか……!?」


 俺は焦りながらも食べ進めるが、田所のペースにはついていけない。


 食玲も必死に天丼を食べるが、田所の勢いは止まらない。


「ふぅ……ごちそうさま」


 ラーメンを十五杯も完食した。制限時間も残りわずかだ。


 田所が余裕の表情でスマホを確認すると。


 こちらも負けてられない。

 だがこちらはカツ丼を7杯目、食玲は天丼を5杯目だ。


 制限時間は40分なので残り3分時間が残り少ない。


 俺はカツ丼8杯目に突入した。一気にかきこむ。だがよく噛む。咀嚼は必要だ。


 そして食玲は天丼を6杯目に突入した。だが勝てない。か。

 田所はラーメンをいつの間にか17杯目を食べ終えていた。


 田所はニヤリと笑い、俺たちを見下ろした。


「悪くない。君たちもなかなかの食べっぷりだったよ」


「くそっ勝った気でいて……」


『そこまで!! 勝利者は……田所健吾!!!』


 負けた。

 僅差で負けた。総カロリーだけではなく汁まで飲んでいた田所は。


 そこが評価ポイントとなった。

 一応汁は残しても問題ないのだが。


「次は負けない!」


「うん、絶対リベンジするよ!」


 俺と食玲は、燃えるような決意を胸に、さらなるフードバトルへの道を歩むのだった。

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