緑の星は瞬かない
坂神京平
【 1 】
コアなファンは以前から噂していたのだが、ついに公式の情報がSNSで、当人の自筆による挨拶文の画像を添えて発表された。
藤澤の卒業に関するコメントは、在籍した八年の月日を反映し、決して短くはなかった。
アイドルとして駆け抜けた日々を回顧しつつ、現在の心境や多くの人々への感謝を、柔らかな言葉で
僕はスマートフォンでそれを読み、藤澤の言葉を
後々振り返ってみたとき、文中に取り分け忘れられない箇所があった。
【たとえ私が卒業しても、夢は続きます。星空に果てがないように、どこまでもずっと】
グループ名になぞらえたそれは、甘い感傷の
「いやあ、
知人の
早めの昼食にチーズバーガーを
「これで『ホシノキ』も初期メンバーが全員いなくなることになるな。でもまあ恋ちゃんはよく頑張ったよ。グループを昔から、地味に支え続けてきたし」
大柴は、僕と同じく約七年前から、「星が降る夜の季節(通称ホシノキ)」の活動を観測している。ただし並行して、常時三つか四つのアイドルグループを追い掛けているそうだ。
僕と大柴は、あるときライブ会場で面識を得て以来、交流を持つようになった。互いに三〇代半ばで男同士だから、話しやすい。
――女の子がアイドルでいられる時間は、ほんの一瞬だ。
僕は、いわゆる「推し」の卒業に直面し、今更それを痛感していた。
トレイの上のセットメニューを、見るともなしに黙って見る。
それから嘆息し、静かに思いを致した。
かつて僕が藤澤歌恋を知り、ライブへ通うようになった頃のこと。
彼女がおそらくは多くの辛酸を
そうして、最後まで主役にはなれなかったことについて――……
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