役立たず陰陽師とJK
小夜
第1話 出会い
「お前、俺の“目“になれ!」
少女は目を見開き、息を吸い込んで腹の底から声を吐き出す。
「やだ!!」
お断りの言葉を残して逃げようとする少女・
「おい、話を聞けって」
「ついてこないで! あたしはなにも見てない!」
ついには両手で「近寄るな」と制されてしまう。それほど認めたくないのか?
涙をためながら、
「”普通”以外が・・・・・・、認められるわけないよ」
口を真一文字に結んだ有栖川はそうつぶやくが、俺にはよく分からなかった。
感情の波を抑えきれず、教室を飛び出していく。今にも泣きだしそうな顔を見たら追いかける気も失せ、俺はただ、有栖川の背中を見送ることしかできなかった。
*
陰陽道の全盛期とも言える平安時代、陰陽師は中国の陰陽五行説に基づいた呪術のもと、宮廷の儀式、日時や方角の吉凶占いを担当していた。また、この世をさまよう
陰陽道の始祖としては
陰陽師は
安倍晴明直系の血をひく本家は、攻撃呪力を得意とする
その御三家のひとつ・神楽坂家の
勝てない相手などいない、と当時は自身の力を過信していた。
3年前のある日、中学に上がった俺が不気味なマスクを被ったあいつを見るまでは。
「そなたの存在意義は何だ?」
忘れもしない、ヤツの一言。まとう雰囲気がただ者ではないことを物語っていた。
17世紀のヨーロッパで使用されていた、鳥のくちばしのようなマスクを被り、肩の長さくらいまでの赤髪と黒スーツが異質さをより際立たせている。
「神楽坂家として、害あるものを排除する。それだけだ!」
「かような才覚を与えられながらその程度か」
呪力によって高めた跳躍力で空中に浮かんでいるヤツとの距離を詰めるが、すでに姿はなかった。
「つまらぬ」
そう言い捨てた瞬間、ヤツは瞬間移動して俺の目の前に現れ、腕を大きく引いた。
とっさに目をつむった数秒後、眼球を一突きされたような鋭い痛み。
「・・・・・・ぐああぁあぁああっ!!」
「そなたはわたしに勝てぬ」
「うるせえ!お前なんか俺が祓ってやる!」
傷口が熱を帯びていく。しかしそれでも視界を奪われただけだ。
声のする方向へ呪力を当てられればいい。
最低限の呪力で痛みを抑え、残りをすべて攻撃へと注ぎ込んだ。
「ーー”
「もうよい」
呪力を込めた呪符を自らの右手へあてがった時には後ろから手刀で首を叩かれていた。遠のく意識の中、ヤツが言っていたことを覚えている。
「その傷が完全に癒えた頃に再び会えるだろう」
そう言い残し、どこからともなく現れた、10羽以上のカラスがヤツを取り囲んでいく。カラスでヤツの姿が見えなくなり、俺は意識を手放した。
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