ひなまつり

天蝶

第0話

ある町に、ひなまつりを盛大に祝うことで有名な一家がいた。

その家族は毎年、豪華なひな人形を飾り、町中の人々を招待して祝宴を開いていた。

特に今年は、代々伝わる古いひな人形の中に、珍しい美しいお雛様があった。

その人形には「トリの降臨」と呼ばれる伝説があり、特定の日にこのお雛様が目を覚まし、何か特別なことをしてくれると信じられていた。


お雛様が目を覚ますのは、ひなまつりの夜。

町の人々は毎年この日を心待ちにしていたが、実際にお雛様が目を覚ますことはなかった。

しかし、今年はどうやら違うようだった。


ひなまつりの前日、主人公である美希は、ひな人形を飾っている最中に古びた本を見つけた。

その本には、昔この町で実際に起こった事件が記されていた。

ある年、ひなまつりの夜にお雛様が目を覚まし、町に災いをもたらしたと言うのだ。

その夜、何かの呪いが解けてしまい、町中の人々が次々と不幸な目に遭ったという。


美希はその話を読み進めていくうちに、恐ろしい考えが頭をよぎった。

ひな人形の中に潜む何かが、今年のひなまつりにも影響を与えるのではないかと不安になった。

彼女は家族にその話をしたが、母親は笑って「そんなものは迷信よ」と一笑に付してしまった。


ひなまつりの日、家族は豪華な料理を並べ、親しい友人たちを招待して賑やかに祝った。

美希は不安な気持ちを隠しつつ、笑顔でお客を迎えた。しかし、夜が更けるにつれ、彼女の胸騒ぎは増していった。

宴が最高潮に達した頃、一人の友人が急に目を回し、倒れてしまった。

驚いた家族が駆け寄ったが、彼はただの酔っ払いではなかった。

彼の顔は真っ青に変わり、吐き気をもよおしていた。


「お雛様に呪いをかけられているのかもしれない…」美希がそう呟くと、他の客たちも次々と体に異変を感じ始めた。

誰もがお雛様に視線を向けた。

すると、突然、お雛様の目がかすかに光り、微笑んでいるように見えた。

その瞬間、周囲の温度が下がり、空気がピリッと張り詰めた。


その場にいた人々が恐れおののいていると、突然明かりが消え、真っ暗闇の中にひな人形だけが浮かび上がる。

お雛様から聞こえる囁き声が、耳の奥で響き渡る。「私を呼び覚ましたのは誰? 私の舞を見たいのか?」


美希は恐怖心を抑えきれず、「違う、そんなことを望んでいない…」と叫んだ。

しかし、その瞬間、家族や友人が次々と異様な行動を始めた。

まるでお雛様に操られているかのように踊りだし、狂ったような笑い声を上げながら、ひな人形の周りを回り始める。


外で聞こえるのは、その奇妙な音と共に、トリの鳴き声、まるで何かの合図のように、彼らはその音に合わせて動く。

美希はその光景に恐れをなしていたが、彼女には…どうすることもできなかった。

彼女はただ従うままその異様な光景を眺めてるしか出来なかったのだ。

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ひなまつり 天蝶 @tenchoo

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