フタツ

第3話

「じゃあ、今までありがと」


「うん、こちらこそ。元気でね?」



長いようで短かった約3年間。


高校生活はほぼ彼との思い出で埋め尽くされているし、沢山デートもしたし、沢山身体も勿論重ねた。


一生この人と共に過ごすのだろうと信じて疑わなかった私は大泣きしたい気持ちを堪えながら、両手に大量の荷を抱えて彼の家を後にする。


『我儘なんだよ泣き虫が。これだから年下は…もっと大人になれよな』


沢山言われて来たこの言葉。


最後ぐらい大人ないい女で終わりたかった私は別れたい理由も聞かず二つ返事で了承したが、そんな事をしたってやっぱり結局私達は一緒にはなれなかった。


彼の前では泣かずに笑顔でさよならを伝えた私は、少し大人になれたかもしれない。


彼の言う、’’大人’’になれたかもしれない。



「…ッ、うぅっ、…」



こんな事になるならば、大人になんて無理矢理ならなくても良かった、別れたくないって素直に伝えれば良かったと後悔の嵐が私を襲う。


ふと上を見上げれば空一面が晴夜が広がっていて、こんな時こそ曇天ならば良かったのにと思っていたが、神様がもしかしたらこの門出を祝福してくれているのではないか、と思うと、少しだけ気が楽になった。



「大好きだったよっ、…」



晴夜に全て溶けてしまえばいいのにと願った夜は、大好きな彼に別れを告げられた20歳の頃の忘れられない夜になった。

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