ヒトツ

第1話

『今日で最後』って自分で自分に言い聞かせながら、玄関に脱いだ靴を綺麗に並べる。


『明日も来てくれるよね?』なんて言われたら結局またあたしは会いに行ってしまうのを分かってて、同じ事を繰り返してしまう。



「今日も来てくれたんだね」


「…、当たり前じゃん」



あたしの顔を見てニコリと笑顔を見せる彼。


あたしの頭をスルリと一撫でする綺麗な手。


其れと同時に塞がれるあたしの唇。


文句の一つでも言えるような関係でも、そもそもそんな事言う根性も無い。



「あーもしもし、俺。…うん、分かってるよ、今から行くね」



そんな声に耐えきれずに部屋を飛び出しても追いかけて来ない事なんて分かりきってる。



好きだとも言えないあたしの感情はどうしたらあんたに伝わるのだろうか。


あたしが投げ出せばあんたとの関係は全て終わるって分かってるし、あんたからするとあたしなんて居なくても何ともないんでしょ?



そんな事、分かりきってる。



さよならを言う勇気も持ち合わせてないあたしは誰がどう見ても意気地無しだ。

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