たまにはゆっくり釣りでもしよう【KAC20251】

サチオウ

第1話

ふー、今週は忙しかった。締め切りに追われ、休日出勤までして何とか仕事を終わらせた。翌日は代休となったので、たまにはのんびり釣りでもしようと思い立ち、出かけることにした。


早朝から行った方がよく釣れるのだが、今日はそこまで気合を入れる気分ではない。昼前からゆったりと釣るつもりだ。


釣り場へ向かう途中、昼食を買おうとコンビニに立ち寄る。すると、ひな祭り関連の食べ物が並んでいた。


「今日は3月3日か。普段あまり意識しない行事だな」


そう思いながらも、飲み物とおにぎりに加え、せっかくだから桜餅を買って店を出た。


釣り場の堤防に着くと、平日だけあって人は少ない。私はあえて釣れそうにない人の少ない場所を選び、ちょい投げで糸を垂らした。


少し大きめの折りたたみチェアに腰掛け、魚がかかるのをのんびりと待つ。


やや強めの日差しに爽やかな海風。とても心地よい。

時折、近くを船が通ると波が堤防に打ちつけ、波音が大きくなる。時間がゆっくり流れていくように感じる。


たまに期待を込めて釣り糸を引き上げるが、何もかかっていない。今日はリラックスが目的だから釣れなくてもいい。そう思いながらも、どこかで期待してしまう自分がいるのが面白い。


適当な時間におにぎりを食べ、まったりと過ごす。


毎日、部屋の中でPCと向き合って長時間過ごす生活。人間は本来、そんなふうに進化してきたわけではないのに皆よく対応するものだ。一体、人はどこへ向かっているのだろう。


海を眺め、雄大な自然を感じていると、ふとそんな考えが頭をよぎる。

今日は携帯も見ずに、このゆったりとした時間を満喫しよう。



そんな時間も、いつの間にか過ぎていた。


時計を見ると午後3時。おやつに桜餅を食べる。寒くなる前に帰ろう。そう思いながら竿を上げると――


重い。


期待しながらリールを巻く。


現れたのは、30センチほどのカレイ。

いい型だ。今日の夕食にちょうどいい。


結局、今日の釣果はこの一匹。でもリラックスもでき、魚も釣れ、満足のいく一日だった。




……ところで、この話は「ひなまつり」を題材にした作品だったはず。


これは……


「暇な釣り」の話では?


これでも、お題通りの話として認めてくれますよね?


終わり。

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