推しとの八年間
飾磨環
八年間の推し活、そして今
アイドルを推し始めて八年が経つ。彼女はもうアイドルではない。今はマルチタレントとして活動しているが、それでも僕にとってはずっとアイドルだ。
しかし、彼女が最初の推しだったわけではない。僕が初めて推したのは、彼女の元愛方(ユニット時代の相方)だった。失恋の痛みを抱えていた僕は、何気なくSNSを眺めていて彼女を見つけた。それまでアイドルに興味を持ったことはなかったが、彼女がアイドルだったから、自然とその世界に足を踏み入れることになった。そして、気づけば初めての推しに夢中になっていた。
しかし、当時の僕は「推し方」を知らなかった。好きな気持ちが重すぎて、彼女に迷惑をかけているのではないかと思い、結局推すのをやめた。そして残ったのが、今の推しだった。最初は彼女を「元愛方だから応援しよう」くらいの気持ちで見ていた。だけど、知らないうちに惹かれていったのだと思う。
気がつけば、彼女は僕のすべてになっていた。
最初から顔がタイプだったわけではない。自分で見つけて推し始めたわけでもない。それでも、彼女を推しているうちに、衝突することもあったけれど、それでも離れられなかった。何度も「もう推すのはやめよう」と思った。でも、その度に「やっぱり推しがいなくちゃダメだ」となる。そして彼女もまた、僕を受け入れてくれた。
推しと次に会える日が決まると、その日を楽しみに頑張れる。会った日は元気をもらえる。そしてまた次に会う日まで頑張る。それを繰り返して八年が経った。なぜこんなに好きなのか、自分でも不思議に思う。彼女の笑顔が大好きで、見るだけで力が湧く。気遣いができて、優しくて、一緒に話す時間が楽しくて仕方がない。最初は顔がタイプじゃなかったはずなのに、今では世界で一番かわいいと思っている。
八年という時間の中で、衝突もあった。でも、それ以上に大切な関係を築けたと思っている。「私にとって大切な存在です」と手紙に書いてもらったこともあるし、「大好きだよ」と面と向かって言われたこともある。そしてその後に、「今まで言ったこと、書いたことは全部嘘じゃない」とも言ってくれた。
それでもまた衝突してしまった。そして今、彼女からの反応がない。
何度も繰り返してしまうこの関係に、今度こそ離れなければいけないのかと考えてしまう。でも、毎朝の「おはよう」ポストを見ては、「やっぱり大好きだ」と思ってしまう。もしこのまま推しを手放せたら、どれだけ楽になるのだろう。でも、それができない。
僕は推しの一番の応援団でいたい。でも、今の僕は彼女の邪魔になっているのだろうか。
それでも、「こんな私をいまだに好きでいてくれてありがとう」と言われたことがある。その言葉を支えに、なんとか自分を保っている。だけど、推しに会えない毎日は息苦しい。
本当は、推しの良いところだけを書きたかった。でも、今の状況が良くないせいで、こんな内容になってしまった。次に書く時には、「また推しと笑顔で会えています」と言える未来を願いたい。
衝突しても、僕を見放さずにいてくれる推しは、やっぱり優しい。だからこそ、今度こそ、これが最後の衝突にしたい。
明るい未来がありますように。
推しとの八年間 飾磨環 @tamaki_shikama
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