第2話 白

 そうそう、思い出した。最後は確か白を自摸ったんだったよな。


 あの盲牌の感覚。誰でもわかるツルッとした感覚が俺に脳汁ブッパさせたんだ。



 お、うるさい音が止んだな。


 今度はカチカチとなる音。理配の音。希望の音でもあり失望の音でもある。



 うお、なんだ。急に体が宙に浮いて…どあ、なんだ、なんかヌルヌルしたのが俺の顔を撫でていったんだが。うえ、気持ち悪い。


 タンッ


 いってえな。思いっきり叩きつけやがって。ちょっと怒りすら感じたぞ。こら。



「ポン」



 ん? ポン? ポンだと? ぬおっ、また持ち上げられた。今度はくっさい臭いな。何だってんだよ。


タンッ

「ポン」


『どうも』


 ん? あ、どうも。って、え? だれ?


『今日は俺、中なんす。南家のオヤジ、白、中ポンして鼻息荒いっすね』


 えっと?


『あ、もしかして初日です? 初日はきついっすよね。大丈夫っすか?』


 ごめん、どういうこと?


『麻雀中に死ぬと牌になるときがあるみたいで、あ、俺大学4年の時に友達の家で酒飲みながら打ってて急アルで倒れて、気づいたら自摸切りされてました』


 え? 


『あ、状況わかんないっすか? 俺たち、麻雀中に死んで麻雀牌に転生したんっすよ。で今は、そっちは白、こっちは中。大三元狙って鼻息荒くしているおっさんの手牌なんす。あ、一日終わったら牌変わりますから、今日は白で我慢してくださいね』


 はい?



「ロ、ロ、ロン! うがあっ」

「おお、どうした、大丈夫か?」

「おい、救急車、救急車呼べ!」

「…」



『ん? 俺はどうしたんだ?』

『あ、今こっち来たんすね。あ、發っすか。そうっすよね。それが死んだ原因っすもんね。初めは發っすよね』

『どういう事…』

『あ、俺たち、麻雀牌に転生…』


 マジか。俺、麻雀牌に転生しちまったのか?

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