女の子が主役の日

宮田弘直

雛祭り前日の話

「ねぇねぇ、先生。雛祭りって何?」


 おやつの時間が終わると、女の子が話しかけてきた。


「雛祭りでは女の子が元気に大きくなってねって、皆でお願いをするんだよ」


 子ども達に何度も伝えてきたから、説明は淀みなく出来る。


 しかし、その子は何か納得してないといった視線をこちらに向けてくる。


 もっと噛み砕いて伝えた方が良かっただろうか。


「でも、お兄ちゃんが女の子だけお願いするなんてふびょーどーだって言ってたよ」


 その言葉に思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「……難しい言葉を知ってるね」


 その子は、「お兄ちゃんが言ってたんだ!」と自慢げに言うと、不思議そうに首を傾げた。


「でも、『いつも皆仲良くして』って先生は言っているのに、なんで一緒にお願いをしないの?」


 その純粋な疑問に微笑みを浮かべると、言葉を伝える為に口を開いた。


「それは、男の子と女の子が違うからだよ」


 その言葉に女の子は、「あっ」と言って、驚いた表情を浮かべた。


「『男の子と女の子を比べちゃいけないよ』って、先生が言ってたんだよ?」


 その子はどうやら少し前にクラスで話した事を覚えていてくれたらしい。


 その事を嬉しく思いながら、「そうだよ、偉いね」と言って頭を撫でると、「先生の話はちゃんと聞いているからね」と、嬉しそうな表情を浮かべた。


「確かに、男の子なのにとか女の子なのにってチクチク言葉を言ってはいけないけど、それぞれ違う所があるから男の子とか女の子って呼ぶ事が出来るんだよ」


 その言葉に女の子はしばらく考えた後に難しい表情を浮かべた。


「……どう言う事?」


「ちょっと難しかったかな。……例えば、同じ女の子同士でも髪の毛の長さとか背の高さが違うよね」


 その説明は良く理解をする事が出来たのか、「私がクラスで一番長いよ!」と、元気良く言った。


「そうだね。それって悪い事では無いよね?」


「うん、どっちも素敵だと思う!」


「それと同じで、男の子と女の子もそれぞれ違う事が素敵なんだよ。だから、雛祭りは女の子って素敵だよねって皆に思って貰える様に女の子が主役なんだよ」


「そっか、だから女の子の日なんだね」


 そう言うと、その子は嬉しそうな表情を浮かべてこちらの腕に抱きついたのだった。

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