格子越しに華酔いの時
そうざ
When I'm Intoxicated by the Flowers and Peer through the Lattice
あれは桜だったのか、梅だったのか、桃だったのか、定かでは御座いませんが、奥座敷の格子の嵌った窓から距離にして
それはもう見事な眺めで御座いましてね。老夫のようなごつごつとした木肌の樹木が、
それにつけましても、華を眺めておりますと、魔に魅入られるとでも言いましょうか、
ところで、私には姉が居りました。一人ではなかったように思います。三つ四つ上の姉が二、三人は居たような気が致します。奇異な物言いに聞こえますでしょうが、
結局、どの姉も待ち
そうだ、思い出しました。実際に待ち人を見掛けた事も御座いました。何処からともなく粗末な
身内の恥を晒すようですが、姉達は一様に多情でした。誰に似たのか、男がなければ一時も暮らせない恋狂い揃いでした。あぁ、あれは逢引きなんかじゃなく、手当たり次第に男を誘っていたのですね。淫蕩な血が流れる姉達であれば然もありなん。えぇ、そうです、そうに決まっていますとも。そう考えますと、全てに合点が行きます。両親が私を姉達から遠ざけたのも、北向きの奥座敷に留め置いたのも、流行り病から身を守るのと同じ仕方だったに違いありません。
けれど、けれども、こうも思うのです。一連の光景は、本当に
実を申せば、見てはいけないものを見てしまったとも感じておりました。それなのに、それだからこそ、格子越しに盗み見た一部始終が今も忘れ難く目に焼き付いているので御座います。貧しい村に童女ばかりが立て続けに産まれたらどうなるか。捨て子や間引きなんかより、もっと利口な
その一方で、姉達は駆け落ちをしたんだと、
はい、湿っぽいお耳汚しはこれにてお
さっ、親御さんが心配なさいますから、そろそろお帰んなさいね。何れ
あぁ、それにしても綺麗だ事。華の色も形も辺り一面に溶け出したみたい。どうもこの頃は益々
こうして格子の内から眺めておりますと、どうしても物思いに耽ってしまいますよ。あれは桜だったのか、梅だったのか、桃だったのかって。私に姉なんて居たのか、懐かしむに
格子越しに華酔いの時 そうざ @so-za
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