第20話 私はキノコ料理を考えたい(1)
週が明けた月曜日。
興奮が抜けきらないせいか早く目が覚めた。
早く、と言っても時間は先週の金曜と同じ。
朝の四時だ。
ただし今日は青果市場へ赴く必要はないから、登校までに随分と余裕がある。
朝食はどうしようか。いつもより手を掛ける?
1本だけ取ってあるトウモロコシを使用してポタージュにしようか。
「むふ……朝から贅沢かなぁ?」
悩んじゃうなぁ。
自分でも分かるくらいご機嫌に鼻歌を口遊みつつ髪を一つに結び、キッチンラッグにハンガーで掛けられたエプロンへ手を伸ばす。
「ん? ――あっ」
床の上に置かれた段ボール。
正確には、キノコのエリンギが30パック入る大きさで、側面に『HOKUTO』と書かれた段ボールに目が留まった。
中には私の手作り
弾かれたようにキッチンを飛び出し部屋へ戻る。
カバンに入れておいた一枚のリーフレット用紙を取り出す。
内容はキノコのレシピ募集企画だ。
「そうだよ――」そうだよ、そうだよそうだよっ!!
担任の
『たけのこの春』と『きのこの秋』二種類のどちらかを選ぶのに、深く考えないで『たけのこの春』を選択したことに後悔したばかりだ。
私、今度はキノコを愛するって決めていたじゃん!!
(こうしちゃいられない)
何か、キノコを使用するレシピ考えないと。
とはいっても、キノコは多種多様。
どんな料理だって作れちゃう。
作れてしまうからこそ「んー……」と頭を悩ませる。
こういう時は――と、キノコの気持ちになりきる為キッチンへと戻り、段ボールを開封し荷物を取り出す。
それから、
キノコ界のファッションリーダー的存在でとってもお洒落さん! 貴意が高いけど、料理上手で家庭的なところもある『マイタケちゃん』を左手に装着。
続けて、
みんなで遊ぶのが大好きでいつも元気いっぱいに走り回るお転婆な女の子! でも実はお嬢様だったりする『ブナシメジちゃん』を右手にスッと装着した。
『ねーねー、マイタケちゃん!』
『あらあら、そんなに慌てたりされて。どうなさったのかしら、ブナシメジちゃん』
『マイタケちゃんはお洒落さんでしょ?』
『ええ、淑女として当然の嗜みですから』
『あたし、どうしたらもっと輝けるかなぁ?』
『輝く、でしょうか?』
『そうそう、もっと美味しくなりたいの!! 教えて、教えて!』
『それは構いませんが、そうですねぇ……』
『ドキドキ!』
『マイタケちゃんと言えば、天ぷらに炊き込みご飯が一般的ですね』
『うんっ、そんなイメージかも!』
『ですが、マイタケちゃんの旨味を引き出すには、ハンバーグなんかもおすすめですよ』
『旨味かぁ……なんかジュワってして美味しそう!』
ふふ、意識してなかったけど、
そうすると、純粋な性格をした女の子の『ブナピーちゃん』は
うん、ツンデレ風デレをした白菜ちゃんのイメージとぴったりだ。
一人クスクスと笑い、段ボールの中に寂しく残されていたブナピーちゃんを取り出し、マイタケちゃんとブナシメジちゃんの間でギュッと抱き締めてあげる。
よし、これで白菜ちゃんは大丈夫だ。もう寂しくないよ。
あ、間違えた。
白菜ちゃんじゃなくてブナピーちゃんだったな――
「――ふふ、変なの」
「変なのはお前の頭だなー。苺」
振り返ると幻のキノコでも見たかのような顔をした采萌さんが立っており、続けざまに、
「毒キノコとか食べてないよなー?」
とんでもない猛毒を吐いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます