第19話 甘王笑住の心配事(2)
『愛してるよ、えすむ~!』
『わたしも愛してるよ。おやすみ』
『待って! お姉ちゃん、まだ言い足りな――』
【退室】をクリックして、姉の甘王苺との通話を強制的に終了させた妹の甘王笑住は、疲労を感じさせる溜め息を吐き出した。
(今日のお姉ちゃん、一段とうざかったなぁ……)
パソコンの電源を落とした笑住は、次に携帯とイヤホンを接続した。
(まあ、夏玉さんが野菜を食べられたことが、よっぽど嬉しかったんだろうけど)
当たりを付けた笑住は無料通話アプリを開く。
お友だちリストに載る【なの姉】を選び、通話をタッチした。
何コールか鳴った後に『笑住?』と通話が繋がる。
『起きてた?』
『アルバム整理に夢中で起きてたけど、どうしたの? 私に電話するなんて珍しいね?』
『今日の話、お姉ちゃんから聞いてね。なの姉は元気かなって』
『うん……まあ……ね?』
歯切れを悪くさせる菜花に笑住は内心「やっぱりか」と嘆息させた。
『知ってるだろうけど、次は秋山さんと冬葉さんに狙いを定めてるからね』
『わかってるよ』
『わたし、なの姉のこと好きだし実の姉みたいだとも思ってる。だから応援したいけどさ、それはお姉ちゃんを傷付けないって条件付きで、だからね?』
『……』答えない菜花には気にも留めず笑住は続ける。
『本来のお姉ちゃんは溜め込みやすくて繊細で臆病な性格なんだからね?』
『そんなこと私だってよく知ってる。情に深くて優しい人だからこそ、人一倍傷付きやすいってことを……私はよく知っている』
『ならさ』と、笑住はこれまで知らぬ振りしていた事実をストレートに告げる。
『今でも野菜が嫌いだってこと、早く打ち明けた方がいいよ』
『っっ!? い、いつから!?』
『見てたら分かるし、なの姉は絶対に美味しいとは言わないじゃん』
『……これ以上嘘を付きたくないから』
『別に聞いてないんだけど?』
笑住がにべもない返事を戻してから無言の時間が三分経過したところで、
『ちゃんと菜の花は好きだもん』と菜花が答えた。
(……今日のところは充分かな)
笑住は『ところでさ』と本題へ切り出す。
『金曜日に、お姉ちゃんが倒れたって聞いたけど何かあったの?』
スーパーのイチゴ売場に長い時間留まっていたことを菜花は説明し、笑住も納得した。
『何回も言うけど』
『あ、うん。いっちゃん本人も気を付けているし、私も采萌叔母さんも絶対に食べさせないよう気を付けてるから』
『ならいいけど、イチゴは食べさせないでね――』
笑住は語気を強くさせ最後言い切る。
『――下手したら命に関わることになるから』
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