さくらのひな祭り

辛巳奈美(かのうみなみ)

さくらのひな祭り

深い悲しみの中で迎えた春の訪れ。3歳の姪、さくらは、一週間前に事故で両親を亡くし、さくらの叔母である私が引き取ったばかりであった。彼女の心には大きな空白が生じ、私も桜の世話を手伝ってくれる祖母も、胸を痛めていた。互いに深い悲しみの中にあり、どのようにかかわればいいのか模索している中、その空白を埋めるように、初めてのひな祭りが近づいていた。

早春の風が温かさを増し、桃の花が咲き誇る頃、さくらの家では、ひな人形の準備が始まった。家族や親戚が集まり、さくらのために豪華なひな人形を飾り付けた。彼女の目が、両親が生きていたころのように、輝きを取り戻す瞬間を期待して。

「このひな人形はね、さくらちゃんのお母さんとお父さんの大切な思い出がいっぱい詰まっているのだよ。」と、優しく語りかける祖母の声が響いた。さくらは、その声に導かれるように、小さな手でひな人形の衣装をそっと撫でた。


ひな祭りの日がついにやってきた。家中が温かな光に包まれ、華やかな飾り付けが一層輝きを増していた。ちらし寿司や雛あられ、菱餅など、伝統的なひな祭り料理が用意され、さくらの前に広がった色とりどりのごちそうが、彼女の小さな心を少しずつ和ませていった。親戚たちは、さくらと一緒に手作りの飾りを作り、折り紙でひな人形を折ったり、絵を描いたりして楽しんだ。さくらは時々、注意深く見ているとかすかに微笑むとわかる様子が見られた。そのかすかな微笑みが見られるたびに、みんなの心に希望が灯った。


その夜、ひな人形の前で家族が集まり、思い出話に花を咲かせた。さくらの両親がさくらをどれほど愛していたかを語り合うことで、さくらの心の中に温かな愛情が広がっていった。

「さくら、お父さんとお母さんはいつもあなたを見守っているよ。だから、これからもずっと幸せでいてね。」と、祖母がさくらに語りかけた。その言葉に小さくうなずき、さくらは小さな手をしっかりと握り返した。

新しい一歩を踏み出したひな祭り。さくらの心には、小さいけれども、新たな希望と愛情が芽生えていた。悲しみの中でも、彼女は愛される存在であることを感じながら、未来へと歩み続ける勇気を手に入れたのだ。

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さくらのひな祭り 辛巳奈美(かのうみなみ) @cornu

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