ハルカイ 

ヤネミ血が固まっちゃってる、無理に剥がしたら痛いよ。

え。じゃあどうやって剥がすの?

そりゃ思いきってよ

ユズの無慈悲な合図の直後にライカの悲痛な叫びが地下駐車場に入って来たばかりのカナメたちの耳に届いた、急いで駆けつけると。

うわぁ 

痛そ…


カンジたちが同情するようにライカを見るそれもそうだ、今のライカはせっかく止まった血をまた垂らして痛そうに堪えている。カナメさんはすぐさまライカに駆け寄っていく、

空々根は口に手を当てながら目元に皺を寄せ痛々しいモノを見ている。僕こと届原も同じ気持ちだ、正直ユズの突発的な行動にも違和感を感じたが、それ以上に彼らどころか自分達を合わせてもライカ以上に手強い者は居ないと言ってもいい。そんな彼女が頬を抉られた形で帰ってきたのだ

ユズは雑ですね。

届原がライカたちの奥にあるハイエースに足を運ぼうとしたとき、空々根がなぜか話しかけてきた、わざとかとも思ったがそもそも届原が動こうとしたことに気づいていない様子だった。

雑とは?

届原が問いかけると、待っていたかのように喋り始めた。

ユズはこの場で一二を争う年長ですが、どこか責任感の無さを感じます。

そう–––ですね。

正直私情をうっすら感じもしたが同意できる部分もある、彼女は雑というかやったらやりっぱなしでその後の後始末を他の友人に任せている節がある。そのために失敗しても責任を被らないので今のような状況で突発的に動いて被害を出している、正直本人に悪意がないモノだと少し前まで思っていたがここ最近明らかに相手を選んで行動に出ている様に思えた。なにか事情があるにしろ、彼らもまだまだ若い、学校で生徒間のトラブルがある様に自分たちも上手く立ち回らねばならない。

とりあえず今はカナメさんが間に入ってくれているので大丈夫だろう。

少年がこちらに気付き近づいてくるアラタはカナメさんと行き違いになるように届原たちの元へ歩いてきた

俺は何をすればいいですか?

アラタが珍しく口を開く彼は何だかんだしっかり者だ、だがまだ自主性に乏しい。じゃあもうすぐ今シフト入ってる人たちの交代時間だからシフトをすぐ交代出来るように準備して上に戻っといてほしい。

俺だけですか?他の奴らは

そう言ってアラタは振り合える

その辺は薬凪さんが––––と横を見るが居なくなっている。一足先にハイエースに積んである物資や武器を鉄砲刀剣類管理所、カンジたちが言うには武器センター、に持って行くため取りに行ったようだ。薬凪は空々根以上に長い間このハルカイホテルで働いている、そのためかどこか彼らの扱いが雑なのだ。最初こそ不真面目にうつったその姿は今薬凪に変わって彼らの相手をする自分の数年後の姿な気がしてならない。

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