廃ビル 黒森視点


4年2組黒森ナオト10歳

ある程度勉強が得意で年相応にふざける

そして最近好きな人もできたただの少年  だけど彼には秘密があった

それは暗殺者であるということ

暗殺者と言うと超人的で圧倒的な強さを持っているなんて思われがちだが黒森に関して言えば全く違った。

それなりに動けはするだがしょっちゅう怪我もするし死にかけるしそもそも誰からの依頼かも分かっていない。

たまにお姉さんや渋い声のおじさんから電話と手紙が来るぐらいだ。

要は手を汚したくないが邪魔な者を消したい上層の方々の良い捨て駒に過ぎない。

お給料はそれなりに貰えるし貰えずとも逃げ場はないので脳死で従うまで。

夕方学生が帰り通学路が静まりつつある頃

寮に帰りいつも通りポストを確認して封筒や学校関連のチラシを取る。

自分の部屋にはルームメイトが居ない多分

学校側が配慮した結果だろう

配慮をしてもボクのこの行いを止めようとしないのが闇だななんて思いながら、定期的に連絡を入れろと言ってくる自分の師であり同僚のヒサキに連絡をする 

大層なものでもなくいつもの説教だった

前回の任務中暗殺予定だった相手に気づかれ咄嗟に受けた威嚇に日和った事で脇腹を刺されたからだ。

『お前は怪我をすることを怖がっている

そのままでは死んでしまぞ?』

反応に困った、ボクは死にたくもないし生きるために受ける怪我も怖い 

出来るなら無傷でなんとか切り抜けたい

『ダンマリか  

まぁいい次の仕事だ 今夜お前が住んでる糸真寮の近くのホームセンターその裏にあるフェンスのついた10階建てのビルで、とある組織の取引が行われると情報が入っているその取引に潜入し取引ごと消してこい 詳しくは手紙で送ってあるはずだ』 

そう言われ思い出したように手紙を開くそこには取引場所や時刻、推定人数などが書かれていたが組織の詳細は載っていなかった

「そのある組織って何ですか」

どうせ教えてもらえないが期待混じりに聞く

『そうだな.......聞くか?』

「え 聞けるなら聞きますよそりゃ」

異例中の異例だった 今まで仕事をさせるだけで内容なんて一切機密だったのに

どんな風の吹き回しだろうか

『長話は好かん 端的に言う

その組織は過去に他国すら巻き込んだ人体実験をしていた その後なんやかんやあって組織は壊滅 実験で作られた人達は警察に引き取られたが殆どガラクタ同然だった。 

その組織の残党も今まで消息を断っていたが今になってまた動こうとしている。

被験者のその後は警察が極秘裏にした事でこちらにもあまり回ってきてはいない』

なんやかんやってなんだ。

「その人体実験と言うのは身体強化とか

超能力とかの話ですか?」

『ああ まさにそうだ そして殆どがガラクタと言ったように一定数は意思疎通がとれるうえ実験が成功していた人もいた』

「じゃあその人たちって今なにして」

『そこからだ その人間のうち何人かはお前と同い年か近い歳だった』

驚いた つまりヒサキさんがボクにこの話をしたのはこの学校 糸真学園にその子供が生徒として入学している可能性があるからだ 

この学園はボクのような孤児も受け入れるような場所なうえ政府との繋がりも強いから他の学校よりも確率は高い。

「ちなみにですが、その人達ってどんな力が使えたんですか」

『無事だった人間の話しなら全員肉体的な力ばかりだな』

「そうですか」

『充分か? ではさっさと任務を片付けろ』

あ、はい黒森はいつもの様に失礼な気もする返事をして電話を切った

いつも通り手紙を隅々まで確認してライターで燃やし捨てる

しばらくして時計を確認し

リュックにナイフと替えの服、ビニール袋を入れて寮を出た。


辺りが暗くなり大通りも車や人通りが減った頃目的地に着いた黒森は、すぐ近くにある公園の木陰にリュックを置き 黒いジャンパーに着替えて手袋をしてナイフを内ポッケに突っ込み辺りを見た、廃ビル周辺は住宅地ではなく似たような10、15階建ての建物が並んでいて人の気配が無い。あちこちお店らしきシャッターが降りていてこれから人を殺す身としては人気がないのはありがたいが普段ここを通りたいかと言われると遠慮したいくらいの雰囲気だった。

とりあえず人が居ないのは分かったので、ソソクサとお目当てのビルに入る

中は薄暗くいかにも今から何かが起こりそうな場所だ、とりあえず時間通りなら取引は始まっている様なので目的地の4階まで階段で行く。3階まで上がると用心棒らしき強面の男2人が階段の踊り場に立っていた。

時間をかけては面倒だと思った黒森は、ナイフを手に取り勢いよく階段を上がる。

するとそれに気づいた二人の男は咄嗟に銃を抜き黒森に向けたそれを察知した黒森が手に持つナイフを刺すように投げそのナイフに気を取られた一瞬の隙にもう一本のナイフで男を刺し殺した。

赤い血が噴水のように溢れてくる、その血に溢れた体をもう片方の男に投げ重みで動きの鈍くなったところをすぐさま切りつける

少し落ち着いてから4階に人がいないことを確認して慎重に上がるするとやはり気づかれていたのか先ほどの男二人よりも地位の高そうな男が3、4人奥のドアから現れる、

「坊主お前俺たちの取引邪魔しに来た口か」

「はい」

嘘ではないので素直に肯定する

「ならしゃーねーわな」 

そういって間髪入れずに銃を向け耳の奥に響く銃声がビル中に鳴り響いた

人気がない廃ビルとは言え銃なんか撃てば見つかる可能性が高くなる、なのにアイツは迷い無く撃ったのだ

幸いギリ避けられたのでボクの耳にカスって血が垂れているだけだ

すぐさま姿勢を屈め一番手前にいた男の後ろに回り首を切り盾代わりにした。

ちっと舌打ちした一人の男が明らからに威力の高そうな銃をこちらに向けた、仲間ごと撃ち殺す気だ予想は当たり撃たれた弾丸は盾を貫通してボクの右腕を血でぐちゃぐちゃにした。

熱い動かすと激痛が走るがやむなしだ、盾の男が持っていた銃を手に取り撃ち返す。

骨が軋むこれだから銃は嫌いなんだ、

銃を持つ手を狙い撃つ、これでは物を持てないうえ反動がひどい銃なんて痛みで撃てやしない。「あのクソガキ」

手を撃たれ使い物にならなくなった男に飛び乗り首を刺す、子供といえど人間なので体重丸ごとかけて上から蹴り付ければいくら大男でもへっちゃらと言い切るのは難しい、近くにいた奴らも同じように腕を撃ち飛び乗り刺し殺す。

少し疲れたので一旦深呼吸をするいつこいつらの仲間が来るかも分からない廊下で血に濡れた顔を拭う

鉄の擦れた匂いがした自分の血なのかこいつらの血なのかわからないが僕の左腕は痛みで震えてる、後で止血しなければ

血に塗れた男たちの持ち物を確認する

特に良いものはない、強いて言えば明らかに大きさの違う銃だけだ。

とりあえず弾はなくとも殴打は出来る

ボクがその銃を手に取った時奥の扉が全開する

咄嗟に反射で手に持つ銃を視界に入ったやつの顔面に投げつけ近くにあった弾の出るもう一丁の銃を撃てるだけ撃ちながら棚の陰に隠れた。

侵入者が現れることは想定していたはずだ、つまり最初の物音に気づき出て行ったさっきの4人が銃声がしたのに帰ってこなかったので

残りの人間で対処しにきたぐらいか。

廃ビルで取引する事から薄々察していたがつくずく残党らしく人員が足りてない。

それともこいつらはただの捨て駒か?

「おい誰だどこに隠れてる出てきやがれ」

「ここに居ますよ」

ボクは棚に近づいたやつの足を引っ掛け倒れた所で首を掻っ切る。

「い"ってぇ」

声の方を見るとさっきの銃乱射で動けなくなった人間が傷ついた部位を手で押さえ縮こまっている。

やはり薄い警護が薄い銃で撃たれただけでここまであっさりうずくまるなんて、

前の任務の時の警護の方がよっぽど熱心だ

なんせ銃を10発当てられて身体なんてまともに動かない中足にかじり付いてきたのだから

コイツらにも何かあるのかと勘繰ってしまう

そう思い少しの不安を残しながらとりあえず終わった事に安堵した時

「亜弥ちゃん アイツ俺たちと同じなのかねー」

遠くから若い男の声がする思い切って声を頼りに薄暗い廊下を歩く

「聞こえるように話してどうするのよ」

声が聞こえなくなって見失っていると

真隣から囁くような声がした。

隣から聞こえたことに驚いて思考が止まりかけるが何とか頭を使い首を捻る。

だが遅かったいや相手が早過ぎた

振り向いた時には僕の首から血が溢れている

ボクの視界に見えたのは同い年ぐらいな少女の顔だった。 


















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