やっぱり君は完璧な我が家ののアイドル
海星めりい
やっぱり君は最高のアイドル
僕の名前はミャウ太。真っ白な毛並みにエメラルドグリーンの目を持つ美猫だ。この家では僕が一番偉い。
家の人間どもは「可愛い~!」とか「天使だねぇ!」とか騒ぐけど、ふん、当たり前だろ。僕ほど完璧な猫、他にいないんだから。
でもさ、最近この家、うるさくて仕方ないんだよ。
原因は僕の下僕――いや、「姉妹」とやら――の
ったく、小学生って頭の中まで小っちゃいのかね。仕方ない……この僕が、可愛さで仲裁してやるしかないか。
その日も、僕は窓際で優雅に毛づくろいしていた。太陽の光が僕の毛をキラキラさせて、まるでハリウッドスター。最高の気分だった。
毛づくろいが終わったらこのまま寝るのも悪くないね。
なんて思っていたらさ、リビングから美沙希の叫び声が響いてきたんだ。
「楓! 私のクレヨン、勝手に使ったでしょ! 黄色がものすごくちっちゃくなってる!」
「なに!? 美沙希だって私の消しゴム、クマのやつ、耳のとこ千切ったでしょ!」
うわ、また始まったよ。僕は舌をぺろっと出して、耳をピクピク。
楓は小学二年生で、おさげ髪のちょっとお姉さんぶってる子。
美沙希は一年生で、ショートヘアーのやんちゃな子。どっちも僕のファンクラブ会員なんだけど、喧嘩になると僕のことなんて眼中になし。
全く失礼すぎるよね。
「黄色は私の一番好きな色だから使いすぎないで言ったでしょー!」
「クマの耳だって大事だよ! 雑に使うなって言ったじゃん! 美沙希のバカ!」
バカはお前らだよ。僕はため息(猫だから「フーッ」って音だけど)をついて、仕方なく立ち上がった。
尻尾をピンと立てて、現場へ向かう。
(まったく、僕がいなきゃダメか)
だってさ、こんな下らないことで僕の昼寝が台無しになるなんて、耐えられないよ。
二人はテーブルで睨み合ってた。美沙希は頬を膨らませて、楓は腕を組んで。
テーブルの上には、短くなった黄色のクレヨンと、耳が欠けたクマの消しゴムが転がっていた。
人間って、こんなしょーもないことで争うんだなぁ。僕なら興味ないから、どっちもゴミ箱にポイだよ。
「落ち着けって」って言いたいけど、僕の言葉はこの二人には「ニャー」としか聞こえない。
だからさ、ここは僕の可愛さで黙らせてやるしかないよね。作戦はこうだ。
まず、美沙希の足にスリスリして気を引く。
次に、楓に甘えて「ニャ~ン」って鳴く。最後に、テーブルでドヤ顔ポーズを決めて、二人を笑わせてやる。完璧だろ? 僕って天才すぎ。
早速、美沙希の足に近づいて、ふわふわの毛を擦りつけてやった。
そしたらさ、美沙希が「うわっ、ミャウ太どうしたの!?」って最初は少し戸惑ったみたいだけど、次の瞬間には「可愛い~!」って叫んで、しゃがんできた。
ふふん、やっぱり僕の魅力は最強だね。
「ねぇ、ミャウ太、私の味方だよね? 楓が悪いよね?」
美沙希は僕の頭を撫でながらそんなことを言ってきたけど、違うよ。
味方とか、そんな幼稚な話じゃないよ。お前らがバカやってるのを止めに来ただけだ。
僕は美沙希を無視して、楓の方にトコトコ歩いていった。
そして、楓の膝に前足を乗せて、首をかしげながら「ニャ~ン!」って鳴いてやった。
これ、僕の必殺技『萌え殺しニャンコビーム』。人間が『死ぬほど可愛い』ってやつだ。
楓の顔が一瞬で緩んだ。「ミャウ太…、何? おやつ欲しいの?」って言いながら、身体を撫でてくる。
ふん、おやつとか関係ないよ。お前らの喧嘩をやめさせたいだけだっつーの。
でもさ、ここで終わりじゃ僕の演技力が勿体ないよね。なあなあで終わらせたら、また再発するだけだろうし。
もっと笑いを入れて、派手に仲直りさせてやるか。僕は楓の膝から飛び降りて、テーブルの上に飛び乗った。
そしたらさ、そこにあったクレヨン(例の黄色のやつ)を前足でチョイチョイして、コロコロ転がしてやった。
美沙希が「ちょっと、ミャウ太! 私のクレヨン!」って叫んで手を伸ばしてきた瞬間、僕は楓の方にジャンプして、耳欠け消しゴムとクレヨンの両方を口に咥えてやったんだ。
「うわっ、ミャウ太、それダメ!」って楓が叫んで、僕を追いかけてくる。
僕は消しゴムを咥えてまま、ソファの下にダッシュ。
「楓、ミャウ太を見てなきゃダメでしょ!」
「美沙希だってクレヨン触らせたでしょ!」
「う、そうだけど……それよりも、消しゴムとクレヨン! ミャウ太が食べたらマズイよ~」
「そうだ!? ミャウ太! それ返して! 食べ物じゃないよ!?」
で、結局二人でソファの下を覗き込んで、「ミャウ太~、出ておいで~!」って大合唱。
ふぁ~、笑えるだろ? 僕が消しゴムとクレヨンを咥えて隠れただけで、喧嘩の原因忘れるんだから。
ほんと、人間って単純で可愛いよね(まぁ、僕ほどじゃないけど)。
しばらくして、僕が『まぁ、許してやるか』って感じでソファの下から出てくると、二人は「ミャウ太~!」って飛びついてきた。
消しゴムとクレヨンはちゃんと返してやったよ(ちょっとヨダレついちゃったけど)。
「ミャウ太が食べてなくて良かったぁ」
「クレヨンよりミャウ太の方が大事だもんね」
って、楓と美沙希が二人して笑っていた。
ほらね、僕の勝利だよ。僕の完璧な可愛さで、くだらない喧嘩が吹っ飛んだ。
その後、二人は僕をソファに挟んで座って、
「ミャウ太がいると喧嘩できないね」
「うん……ごめんね楓。次から気をつけるから許してくれる?」
「私も気をつける。美沙希……ごめん」
お互いに謝って仲直り。
ふぁ~、よかったよかった。平和が戻ったね……僕のおかげで。
そのまま、僕は二人の間に寝そべって、撫でられながらゴロゴロ。
時たま、二人に身体を預けるように態勢を変えておく。
「もしかしてミャウ太。全部、分かってて」
「えー、まっさかー?」
「でも、もしそうなら……
「うん、こんな可愛いアイドルには勝てないや」
でしょ? もっと崇めればいいと思うよ
僕がいなきゃ、お前ら毎日クレヨンとか消しゴムとかを投げ合って終わってただろうから。
でもさ、そんな風に思っているなら、感謝の印に高級キャットフードくらい出してくれてもいいよね。アイドルだって、少しは贅沢したいんだから。ニャー!
やっぱり君は完璧な我が家ののアイドル 海星めりい @raiki
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