熱闘! ひなまつり
カニカマもどき
ひなまつり
私が山梨県のとある中学校に転校して間もない、ある日のこと。
「三月三日の特別授業は、ひなまつりに行きます」
先生がホームルームでそう言ったとき、おかしいとは思ったのです。
雛祭りを祝うとか、雛飾りを見に行くのではなく、「ひなまつりに行く」とはどういうことか、と。
しかし。
「雛さんは、こっちのひなまつりは初めてですよね。楽しんでくださいね」
そう言って私へ微笑みかける先生を見て、なんとなく私は、何も聞けなくなってしまったのでした。
そして、来たる三月三日。
特別授業の時間になると、私たちのクラスはマイクロバスに乗り込みます。
そうしてやって来たのは、なんと釣り堀。
もちろん雛飾りなどは無く、ひなまつりの"ひ"の字も見当たりません。
釣り竿を手にし、皆で等間隔に並んで釣り人の構えをとりながらも、頭の中では疑問符が踊るばかり。
「制限時間は30分! 釣り上げたものは、先生に見せてジャッジを受けてください!」
戸惑う私をよそに、先生が高らかに宣言します。
「それでは位置について……レッツ、ひなまつり!」
迷い無き眼で一斉に釣り針を水中へ放つクラスメイトに、私もあわてて続きます。
ややあって。
「しゃあっ!」
威勢のいい雄叫びを上げ、クラスメイトの
何の魚かと思い見てみると、それは魚ではなくジュースの空き缶でした。ここ、釣り堀なのに。
一平君も運が無いな、と私は思ったのですが……
「グッド! 一平君に80ひなまポイントッ!」
先生は、一平君に謎の点数を与えました。
「しゃあっ!!」
再度、雄叫びを上げる一平君。
広がる拍手。
タブレットに得点を記録する委員長。
一体何なのだ、これは。
「長靴でました!
「また一平君! 連鎖ボーナス込みで90ひなまポイント!」
その後も、クラスメイトは次々にガラクタを釣り上げ、先生は謎のポイントを謎の基準で付与していきました。
「驚いたでしょう。この辺りの"ひなまつり"は、よその地域のそれとは全く別物だから」
いつの間にか隣に移動してきていた委員長が、そう言いました。
タブレットを操作しつつ淡々と話すので一瞬分かりませんでしたが、私に解説してくれているのです。
「漢字で書くと、こう」
そう言って、タブレットを私に示す委員長。
画面には、""
「非生物……生き物以外のモノを狙って釣り上げる技術を競うスポーツ。それが、この辺りに古くから伝わる"非生釣り"。雛祭りの日に非生釣りをする人は多いけれど、特にうちのクラスは先生が非生釣りガチ勢だから、こんなふうに特別授業の枠を利用して、公式ルールに則ったガチ競技大会を開く」
今日は普通の釣り針を使っているけれど、代わりに磁石を用い、金属製品のみを狙っていくなど、様々なスタイルがあるらしい。
なんだかコツが必要みたいだし、私のような初心者は、何も釣れなくても仕方があるまい。
そうした、ある種の境地に達したところで。
私の釣り針にも、何かがヒットした。
慎重に釣り上げてみると、それは、片手に収まるくらいの大きさの、かわいいお雛様でした。
「お見事ッ!! 雛ちゃんに、2
桁が凄い。
先生の声量も凄い。
結局、私はこの年の非生釣りの勝者となり。
商品としてお雛様を家に持ち帰り。
それを眺めながら、美味しいちらし寿司と雛あられを、もぐもぐと食べたのでした。
熱闘! ひなまつり カニカマもどき @wasabi014
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