不在の特待生への応援コメント
読ませていただきました。この物語は最初から達也の「音楽そのもの」ではなく、「達也を取り巻く人間たち」から始めるのか、と強く印象づけられるお話でした。しかも達也が直接的に登場していないことで、達也が普通の学生とは少し違っているということも伝わってきました。あらすじにある「天才」という言葉が達也自身にどう作用しているのか、かなり重要そうです。そんな中、蘭は達也を「天才」として見ていないんですよね。その気持ちの根源も気になるところです。
それから「音楽史のレポート」という言葉からも、改めてこの学校が音楽の学校であることが伝わってきました。そして学生たちも、音楽を専門にするためにここへ来ている。ここからは個人的な考えなのですが、達也には音楽とそれ以外の一般教養への温度差があるのかな、と……そうだとしたら、達也の考え方も一見すると合理的に見える。でも、ここには後々かなり面白い反転ができそうです。達也は「音楽」を扱うから。もしかすると達也は、「自分に必要なのはピアノだけ」と思っているのかもしれない。でも、他者との交流によって、「音楽はピアノだけでは成立しない」ことを知っていくのかもしれない。歴史、文化、人間、感情、他者。そういうものを知ることが、最終的に「演奏」に返ってくる。そういう物語なのかもしれないな、と考えさせられました。ゆっくりになりますが、続きを読ませていただきます。
作者からの返信
聖さま
お読みくださりありがとうございます。丁寧に考察いただき、大変励みになります。
この物語は音大を舞台とした群像劇であるため、始まりも登場人物を起点としたものになっていますね。辰也本人の視点ではなく、辰也を取り巻く人々の視点から始まることで、辰也という人間の特異性を浮き彫りにしようとしています。「天才」と呼ばれる立場が彼にどのような影響を与えているか、ぜひご注目いただきたいところです。
西洋史の授業に出ない辺り、辰也は実技以外を軽んじている姿勢がありますね。現状はピアノ以外のものは不要と考えている辰也ですが、後にそうではないことに気づく。他者との交流によって辰也と、彼の演奏がどのように変化していくかが本作の肝になります。
完結済みの作品ですので、安心してお読みいただけると思います。ゆっくりでも構いませんので、彼らの物語を見守っていただけますと幸いです。
天才ピアニストへの応援コメント
読ませていただきました。辰也、思っていた以上に天才だけど人間関係が壊滅しているタイプでしたね……
そして今回のお話で、「挫折」がかなり効いてきそうな人物造形になっていると感じました。辰也がどういう人間なのか、かなり鮮明になってきたように思えます。
辰也、想像以上にピアノしか見えていませんね。今回の辰也の描写、徹底しているように感じます。「お前が勝手にやっただけだろ」って、これ普通ならかなり酷い台詞です。わざわざ絶版本を探してくれたのに「ありがとう」すら言わない。でも、辰也本人にはおそらく悪意がない。「自分が頼んでいない」→「だから自発的にやった」→「なら自分が礼を言う理由はない」という、ものすごく機械的な論理で動いているように思えますね。
そして、「練習したら上手くなるに決まってる」も同じなんですよね。他の学生は、「どうすれば上手くなるんだろう」とか「練習しても上達しない」みたいな悩みを抱えている。でも辰也には、「練習すればいいじゃん」以上の世界が存在しない。これは結構残酷だと思いますね……
蘭も切ないですね。蘭は辰也の「天才ピアニストとしての辰也」に惚れているだけではなさそうだから。むしろ幼少期から、辰也がこういう人間だったことを知っている。彼が人付き合いが苦手なのも、自分に感謝しないのも、それでもピアノに対してだけは異常なほど真剣なのも、全部知っている。だから蘭にとっては、「なんでこんな男に振り回されているの?」という周囲の疑問そのものが、たぶんちょっとズレているんでしょうね。
でも、蘭はちゃんと傷ついているんですよね……ここが個人的にかなり重要だと思いました。ただの「健気な幼馴染み」ではなく、辰也に何をされても喜んで尽くしているわけじゃない。「私はあなたのためにこれだけやってるんだから、少しくらい見てほしい」という感情があるようにも思えます。でも辰也はそれを理解できない。ここに変化がもたらされるのか気になるところですね……続きを読ませていただきます。
作者からの返信
聖さま
続きをお読みくださりありがとうございます。前回に引き続いて丁寧なご感想、大変励みになります。
はい、辰也は本当にピアノしか見えていません。人の気持ちを想像するのが苦手で、だから礼も言わないし、「練習すれば上手くなる」発言が出てくる。辰也は天才だからできてしまうのかもしれませんが、全員がそうではないことが理解できないんですよね……。こうした辰也の人間性が、挫折によってどう変化していくかが本作の見所です。
蘭は幼馴染みということで、冷淡な辰也の人間性も含めて好きになっているのだと思います。押しつけるわけではないけれど、少しは自分の気持ちを理解してほしい。でも辰也の人間性を知っているからこそ言っても無駄だとわかっている。そんな二人の関係性がどう変化していくかにも注目いただけると幸いです。