第9話 海港都市 ジェノバ
「それじゃあ、心残りはない?」
「ああ、まあ一生ここに来ないわけではないしここが故郷ってわけでもないし。レイラこそ、初めてきた人里がここなわけだが心残りはないのか?」
「うん。大丈夫。」
「そうか。」
そう言ってアベルは都市の出入りする門のまえで街の方向に振り返る。
「短い間だったが、世話になったっと。」
そう言ってアベルはレイラと向き合う。
「行くか。」
「うん。」
2人はまた歩き出す。
あの葬られた神獣が眠る山へ…。
〜〜
「「……。」」
目を瞑り、手を合わせる。
神獣が眠るこの山は今も濃い密度の魔力で覆われている。
レイラ曰く、フェンリルの肉体は死んでも加護は死なないため高純度の魔力が保持されているのだそう。
アベルには加護のことがよくわからないためその見解を言われてもしっくりこなかった。
しばらくしてレイラとアベルは合わせていた手を動かして小さな芽に目を向けた。
「この芽はフェンリルの体に含まれてた魔力が内包されてるね。」
「『鑑定眼』で分かるのか?」
「それもあるけどこういうのは近くにくればわかるよ。」
魔力に触れてきた歴が長いとそこまでに上達するものなのかとアベルは感心する。
「この小さな芽がなくなるか新たな大地の加護を受け取るに相応しい者が現れない限り加護はこの山を守るだろうね。」
「加護ってのはその芽を器にしているのか?」
「そうだね。」
「芽なんかが器になるのか?」
「これはまだ未解明のことなんだけど世界には魔力を大量に保有できる植物があるんだよ。原因は不明だけど今回みたいな神獣とかが亡くなった時にできやすい傾向がある。」
「ふーん。じゃあ、その魔力を大量に保有できるっていう植物が…。」
「杖の材料だね。」
そこまでいってレイラは人差し指に嵌めていた指輪に魔力を込める。
すると、指輪が光り始めその光から花が出てくる。
金色に輝く綺麗な花だった。
「え、いや、ちょっと待ってくれ。その指輪もそうだがその花って…。」
「うん。ヘレナだよ。」
ヘレナとはエルフの里に生息する貴重な花である。
エルフの里がそもそも少ないこととエルフの里の中でも滅多に見つかることのない花であるためお偉いさんが大切な人が亡くなった時に添える花である。
「レイラってそういえばエルフなのか…。」
「まあね。」
そしてレイラは花を添える。
「それじゃ、行こうか。」
「…ああ。」
そう言ってまた2人は歩き出した。
暫く歩き、道に出たところでレイラが口を開いた。
「ねえ、私たちが向かってるジェノバはどんなところなの?私まだ行ったことがなくて…。」
「ああ、ジェノバは俺も子供の頃行っただけだからそこまで覚えてるわけじゃないんだが…。」
「海港都市なんでしょ?」
「そうだ。たくさんの人が来るからこの国1番のギルドがある。」
「あと香辛料が有名なんだっけ。」
「まあ作ってるのは別のとこなんだが。」
「?」
「輸入してるんだよ。価格差の大きい香辛料は売ったら利益が出るからな。」
「ふーん。」
人間と関わって来なかったレイラはやはりこういうその土地の特産品や有名なものなどを知らなかった。
「ここから歩いたらありえないほどかかるから途中で馬車を捕まえたいところだな。」
「じゃあ私の召喚獣使う?」
「…なんて?」
「だから召喚獣を…。」
「召喚獣も使役しているのか!?」
レイラの爆弾発言がアベルを驚愕させる。
魔物もしくは神獣などを使役するには高度な召喚魔術とそれに応じた魔力量と召喚した魔物に打ち勝つ実力が必要である。
「魔力量と実力は置いといて召喚の魔法陣も作り出せるのか…!」
「これに関してはズルしたよ。」
「ズル?」
「うん。お婆ちゃんから魔法陣を
「受け継いだ?」
「お婆ちゃんは魔法陣の知識を私の頭に入れてくれたの。」
「そんなこと…可能なのか?」
「あれはお婆ちゃんの『
「レイラのお婆ちゃん何者だよ…。」
そんなアベルを横目にレイラは丁寧に魔法陣を組んでいく。
「複雑だから苦手なんだよね…。」
そう言いながら魔法陣はだんだん大きくなっていく。
「
すると魔法陣のなかから手のひらサイズの白い龍が出てきた。
「かわいいな…というか龍!?」
「これは小さいモードだから。元のサイズはちゃんと大きいよ。」
「俺は今日1日で規格外なものを見過ぎている…。」
「そんな大袈裟な…。」
「これが事実なんだよ…。」
そう言っていると龍が大きくなっていく。
「それじゃ、乗ろうか。」
「振り落とされないことを祈るよ。」
「嫌われなければそんなことしないよこの子。」
「嫌ってたら振り落とす可能性があるのか…。」
2人が龍に乗って空の旅を始める。
それから3時間後、2人はジェノバに着いた。
〜〜
「いや、早すぎるだろ。」
2人が乗って行った龍はとんでもないスピードでジェノバまで運んでくれた。
スピードはあったがレイラが空気抵抗を和らげる魔法を使ってくれたため気持ちのいい風を感じながらジェノバまで向かえた。
「今後の移動手段は基本あの龍だな。」
「有能だよね。でもなんで都市に入る前に降りたの?」
「あれで都市に入ったら大騒ぎだろ。ただ、」
「ただ?」
「あの距離だと見られているかもな…。」
あまりに行くスピードが早かったので距離感を間違えてしまった。
「まあ大丈夫…なはずだ!」
「そうだね。」
きっとバレいていない。
そう信じて2人は門の前に立つ門番のところへ行った。
「2人のどちらかに身分を証明するものはあるか?」
「俺の冒険者カードがある。」
「見せてもらう。」
そう言われたアベルは冒険者カードを差し出す。
すると門番は驚愕した表情でこちらを見る。
「魔導士様でしたか!?申し訳ありません、無礼な態度をとって!」
「いや、いい。それじゃあ通っていいか?」
「あ、少しお待ちください。ここから少ししたところで龍らしきものが観測されたらしいのですがお2人はなにか知りませんか?」
「…いや、何も知らない。」
「そうですか、お引き止めしてすみませんでした。どうぞお進みください。」
こうして街に入った2人だったが…。
((バレてた…。))
バレていた。
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まだ日曜日なのでセーフ判定でおねしゃす!
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