第3話 加護の恩恵

「杖の点検に来た。」


「あ、はい。少し待っててください。」


そういって奥でバタバタするレイラ。

暫くして奥から顔を出した。


「…忙しそうだな。」


「少し、やりたいことを思いついたので。」


「やりたいこと?」


「はい、できれば貴方も協力してもらいたいんですけど。」


「え、俺が?」


「はい、フェンリル討伐何ですけど。」


「…え?」


アベルは驚きを隠せなくなる。

自身が明日には討伐のために出発しようと思っていた事を考えると提案を受けることは別にいいと考える。エルフは魔法を得意としているから。

しかし、


「何故やろうと思った?」


「何故?…そうですね…強いていうなら…気が向いたから?」


「気が向いた…。」


気が向いたらエルフはフェンリルを殺しに行くのだろうかと疑問に思うアベル。

(※レイラが特殊なだけです。)

しかし一緒についてきてくれるのは心強いと感じたアベルは誘いを受けようと決意する。


「わかった、じゃあ一緒に行こう。フェンリル討伐へ。」


「いつにしますか?私はいつでも行けますけど。」


「明日は?」


「行けます。」


「じゃあ明日で。それと、これから一緒に仲なんだから敬語はやめてくれ。」


「…わかった。じゃあ杖の点検したいから…」


「ああ、はい。」


そうして差し出された杖を鑑定眼を使って見定めるレイラ。


「…魔法陣の文字は問題なし、胴体は…問題なし。魔力回路は…問題ない。よし、大丈夫そう。」


「点検ってそんなに早く終わるものなのか?」


「いや、これは鑑定眼があるからできることだよ。」


「鑑定眼!?鑑定眼を持っているのか!?」


「うん、持ってる。」


「作り話でしか出てこないものだと思っていたんだが…。」


レイラは生まれつき鑑定眼を持っており、魔力の動きを視る・・ことが可能である。


「鑑定眼ってそんなに珍しい?」


「当たり前だろ。」


「当たり前なんだ…。まあいいや。それで、フェンリルに関しての情報交換とかは明日からでいい?」


「まあいいやって…。まあそうだな。どのみちあの山に行くには何日かかかるしな。」


「わかった。じゃあ明日の6の刻にここに来れる?」


「ああ、了解した。じゃあ今日はこれで。」


「うん、また明日。」


「ああ、また明日。」


アベルが帰るとレイラはまた仕事の作業に戻った。

暫く店を開ける事になるので元から来ていた注文を先に終わらせなければならないためだいぶ忙しい。


(旅の前なんだし休息も取りたいのに…。)


レイラはそんな事を思いながら1人書類確認をするのだった。


〜翌日〜


「…おはよう。」


「お、おう…。なんか旅の前なのに元気なくないか?」


「仕事全部急遽終わらす事になったしね…。忙しかった…。」


「本当に大丈夫なのか?」


「大丈夫大丈夫。多分。」


「そこは絶対と言って欲しかった…。」


まあフェンリルのいる位置までつくのに何日かかかるためその過程で回復すればいいかと考える。


「ねえ、移動手段って徒歩だよね。」


「ああ、それ以外にあるのか?」


「ううん、人間には魔法で飛んでいくって言ってる馬鹿がいるって聞いて。」


「ああ、確かに時々そういう馬鹿はいるな…。そもそも普通のやつはフェンリルに挑むっていう思考にならないんだが…。」


「まあ、フェンリル強いからね。」


そう言いながらレイラは用意していた荷物を持ち、


「行こう」


「ああ。」


歩き出した。


〈翌日〉


「疲れてないか?」


「大丈夫。それよりそろそろフェンリルに関しての情報交換をしよう。」


「ああ。」


アベルは歩きながら話し始めた。


「俺が戦った時はそもそも戦いにならなかった。山に踏み入った瞬間魔力がまともに使えなくなった。それでもフェンリルのいるところまでは行ったがアイツは魔法も使わずに俺を吹っ飛ばした。それで重傷を負って魔法の杖も壊れたんであの山から1番近い街…プロボデスに寄ったんだ。」


「そっか。じゃあ私の番ね。アベルが戦おうとした時に魔力を上手く練れなかった理由は『大地の加護』のせいだよ。」


「『大地の加護』?」


「そう。フェンリルが持ってる加護だよ。山に踏み入った者から魔力を吸収していく。」


「強いな…。」


「うん。地面に触れていなければ発動しないんだけど空に飛んでたほうが魔力消費も激しいからおすすめはしないかな。」


「どうする?」


「対策はあるよ。私の『氷の加護』を使う。」


「!加護を持ってるのか!?」


「うん。それに私の加護は世界の中でも強い方だから加護の押し合いでも負けないはずだよ。」


「すごいな…。」


「まあ私、千年生きてるし。」


「…エルフはみんなそうなのか?」


「いや、私が長寿なだけ。」


「お前は何かと規格外だな…。」


レイラは研究と人間の街に行き着くまでの期間を合計すると千年以上生きている。

魔力は生きた分だ生成されるため魔力量が桁違いであり、杖の研究の過程で魔法も使用するため覚えた魔法も多い。

それに加えて魔法に関してはレイラは天才なので現代最強の魔法使いはレイラである。

尚本人はこれを自覚していない。


「明日には山に着きそうだね。」


「ああ。」


「ちゃんと今日は休んでいこう。」


「わかってる。それと、作戦会議もしなきゃな。」


「次の休憩地点で話そっか。」


そう言って2人は山の麓を目指して歩いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


加護について


加護とは、神に寵愛された者だけが受けることができる力のことです。

主に1つの属性の魔法を極めると得られます。

フェンリルは大地…つまり土魔法。

レイラは文字通り氷の魔法です。

それとレイラの加護が強い理由は水の加護の上位互換だからです。

普通は水→氷の順番で魔法を習得しますがレイラは天才だったので感覚で氷魔法を習得しています。

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