ウーレアーの杖
第1話 杖屋のビオス
「店主さーん、先日頼んでいた杖なんですけどー…」
「スミスさんですか?はい、少し待っててください。」
そう言ってレイラは席を立ち、奥から自身の身長より少し小さい杖を奥から取ってきた。
「この杖は頑丈なので大抵の衝撃からは耐えられますが、何か少しでも違和感を感じたら気軽にきてください。」
「おお…!しっくりくる…!ありがとうございます!」
「はい、大事に扱ってくださいね。」
レイラは無表情でそう言った。
客が立ち去ると、先程までやっていた書類整理に戻る。
(このお客さんは明日来るからこっちかな…。じゃあこの杖とこの杖を仕上げればいいと…。)
今日中に仕上げればいい杖の本数を確認したレイラは客が来る前に最後の仕上げを開始する。
(このコーティング作業は術式を刻み込む事の次に大変…。)
そう思いながらレイラは自分専用の杖を取ってコーティングを開始する。
「ここを広げて…。」
これを1時間ほど続けると杖になる。
と、そこでいつもやってくる少女が来た。
「あ、今日も来たんだ。今ちょうどコーティング中だから見てっていいよ。」
「…うん。」
この少女はいつも無口でいるため何を考えているかレイラにはわからない。
しかし、毎日ここに来ることから杖を作る姿が好きなのだろう。
将来は私のような杖職人になるかもなと思いながらコーティングを続けていく。
〜〜
「…ふう。完成。」
「…綺麗。」
「ありがとう。」
そう言いながらレイラは出来上がった杖を大事そうにしまった。
「あと1本あるけど今日はもう日が暮れちゃうから帰りなさい。」
「…分かった。」
若干不満そうな顔をして少女は扉の前に立ち、
「また明日。」
といって帰って行った。
(そういえばあの子名前なんだっけ…?)
あまりに興味がなさすぎて聞いていなかった。
(私はこういう人に興味を抱かないとこがダメ…。)
これじゃあ出会いを求めてきたのに意味がないと嘆く。
(切り替えよう。)
そう思い、レイラは杖を持ち直してコーティングを再び開始した。
〈翌朝〉
「んー。昨日は夜遅くまでやっちゃった…。」
魔法陣の新たな形を組み込む事に挑戦しているがなかなかに難しいと嘆くレイラ。
やはり研究には長い時間が必要だと痛感する。
そこで、チリンッと扉の鈴が鳴った。
「いらっしゃいませ。」
「ここが王都で有名な腕のいいと聞く杖職人の店か?」
「貴方の聞いた店名が『ビオス』ならここであっています。」
「なるほど、ここのようだ。俺は先月魔法試験を受ける過程で杖が壊れてしまってな。直してくれないか?」
「わかりました。杖の修理ですね。まず杖の状態を見るので杖を出していただけますか?」
「はい。」
「…これはまた…随分とやられましたね。」
「ああ、完全に油断していた。直せるか?」
「少し時間がかかりますけど問題ないです。」
「本当か!?」
「え、ええ。本当ですけど…」
いきなり身を乗り出してきたので驚きを隠せないレイラ。
「あ、ああ。すまない。他のところは無理だと言っていたのでな。」
「こうゆう系統の杖は珍しいですしね。」
「分かるのか?」
「はい。私を育てた祖母と同じ系統です。元から術式が組み込まれていないものなので使用者の高い技術を必要とするものですね。」
「そこまで分かるのか…。」
「杖職人ですので。それよりもお代ですけど少々お値段はりますけどいいですか?」
「ああ、直せるならなんでも。」
「はい、ではーー。」
そういって会計を済ませる。
「では、3日後にまた。」
「ああ、よろしく頼む。」
そう言って帰って行った。
ここで、レイラは1人考えていた。
(杖の修復は問題ないけどこの杖につけられた傷ってーー。)
レイラはまだ知らない。
この出会いこそがレイラの人生を大きく変えるものとなると。
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これから物語の途中で説明すると思いますけど分かりにくいと思うので魔法と魔法の杖の関係についてお話しします。
そもそも魔法とは魔法陣に魔力を通すことで起きる現象のことです。
そしてその魔法陣を描くのに必要なものが杖なのですが、そもそも杖には2通りの作られ方があります。
❶魔法具
魔法具とは、先程レイラが修理を受けた杖やレイラの祖母が持っていた杖です。
魔法陣が元から組み込まれているものではないため使用者の高い技術力が求められます。
そもそも魔法具自体本数が少なく、街に出回っている杖のほとんどは魔導具です。
魔法具を使うメリットとして出力に限界がないことが挙げられます。
まあ、扱えるほど魔力がそもそも普通の人間にはないのですが。
❷魔導具
こちらは杖に元から記録する魔法陣が読み込まれており、自身がダンジョンで手に入る魔導書を読めば使える魔法が増えるものです。
こちらは魔法陣に魔力を通すだけなので魔法具に比べて扱いやすくなっております。
魔導書についてはまた今度!!
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