杖の旅
つー
第0話 杖との出会い
少し、昔の話をしよう。
私は小さい頃お婆ちゃんに育てられた。いわゆるお婆ちゃん子。
お婆ちゃんは魔法学の先生で、魔法の事について沢山教えてくれた。
でも私が興味を持ったのは魔法ではなく魔法陣の話だった。
魔法陣は仕組みが面白かった。
魔法とは、魔法陣に魔力を流し込む事によってできる現象の事を指す。
つまり、魔力があっても魔法陣がなければ何も意味をなさない。
多くの人は魔力に興味を示すけど私は魔法陣の大切さを感じ取った。
この事をお婆ちゃんに言ってみると
「レイラは賢い子だねぇ。」
「ほんと?」
「ほんとだよ。ここで一つ質問するね。魔法陣は、どうやってできてるでしょう?」
「うーん…。やっぱり魔力?」
「いいえ。答えは『わからない』よ。意地悪な質問してごめんね。」
「わからないの?」
「ええ。お婆ちゃんも知らないわ。でも少なくとも魔力ではないってわかってるの。」
「どうして?」
「魔力っていうものはね、お互いが近くにあるとくっついちゃう性質があるの。でも魔法陣って作りが細かいでしょ?あんなもの作るには魔力だとどうやっても無理になっちゃうの。」
「ふーん。」
「でもね、魔法陣を作ってる何かが魔法の杖から作られてることはわかってるの。」
「杖?」
「ええ。杖がないと人は魔法を使えないでしょ?」
「でも魔族は使えるよ?」
「それは杖と同じ性質を持ってるからだね。」
「同じ性質?」
「ええ。杖には魔法陣を作る何かが含まれていてそれは魔族の体にも入ってるってことよ。」
「そっかぁ。杖かぁ…。」
「私の杖を見たいかい?」
「うん!」
そういうとお婆ちゃんは席を立ち棚から白く長い杖に宝石が埋め込まれてたものを持ってきてくれた。
私はそれを見た瞬間、心を打たれた。
なんて綺麗で、美しいんだろうと。
その日から私は杖の研究を重ねた。
何年も続けた。
しかし、杖の研究を始めて10数年経った頃に大好きなお婆ちゃんがこの世を去った。
私は絶望した。
私が部屋にこもって研究にふけっている時間をお婆ちゃんと話す時間にすればよかったと後悔した。
泣きじゃくった。
部屋の隅に座り込んだ。
何も考えずにいようとしていた。
でも時間は私を待ってくれない。
刻々と流れていく。
お婆ちゃんが亡くなって1週間が経った時、ようやくお婆ちゃんの遺品を見る事にした。
お婆ちゃんが大切にしていた杖や魔法陣に関する書物もあるはずだと思い、丁寧に扱った。
すると途中で杖と一緒に手紙を見つけた。
誰に向けての手紙だろうと思い、中身を見てみた。
私の自慢の孫、レイラへ
レイラがこの手紙を読む頃には私はもう貴方がいる場所にはいなくなっているでしょう。
元気にしてる?
してないでしょうね。
貴方は人一倍優しい人だからきっと私がいなくなって泣いているでしょうね。
先に逝ってごめんね。
でもこれは仕方がないことなの。
だって貴方はエルフで、私は人間だから。
でも私ももう少し貴方を見守っていたかった。
貴方は優しいけどまだ未熟でしょ?
自然で1人で生きていけるような強さはあるけど人を殺すような度胸はないでしょうし。
でも本当にごめんね。
本当はもう自分が死にそうなことくらい分かってたの。でも貴方、最近杖の研究に没頭してるでしょう?
邪魔しちゃいけないかなって。
でも貴方と話さない期間を経て、やっぱり寂しいと思った。私が死んだら貴方も同じような思いをしてしまうのかしら。
心配だわ。
でも、これだけは覚えていて。
お婆ちゃんは貴方を最後まで愛してた。
貴方を森で見つけて拾った日から、この命が尽きる時まで。
これは絶対だから。
新しい出会いもこれからあるだろうし、忘れてくれて構わないけどたまには思い出してね?
お婆ちゃん寂しくなっちゃうから。
それじゃあ、元気でね。
追伸
私の遺産は貴方のものだから好きにしていいわよ。
お婆ちゃんからの最後の贈り物だから大事に使ってね。
貴方のことが大好きなお婆ちゃんより
私は再び泣いてしまった。
寂しかったんなら言ってよとか、絶対に忘れないからとか、いろんな思いが入り混じった。
そんな思いをして、また研究を再開した。
人との出会いを求めるべきか迷ったけど無理にやるべきじゃないと考えた。
お婆ちゃんは無理して人との出会いを探しても喜ばないと思う。
私はもう数百年経つと、旅に出た。
私は今度は無理にではなく、自分から出会いが欲しくなった。
あの時無理に旅に出なくて良かったと思った。
今こうして自分の意思で人里を目指せたのは嬉しいことだ。
そうして何百年もして、人里にたどり着いた。
これから話す話は人里に降り立ってまた数十年経った頃の話である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次更新するまでだいぶかかる予定です。
初っ端から間空いてすみません。
それと、自分の書き方が気に入らなかったので少し修正入れしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます