いまどきのひなまつり

和辻義一

時代を反映したひな飾り

 うむ? これが今時の流行をふんだんに取り入れたひな飾りとな?


 ぱっと見た感じでは、今までのものとそれほど変わらないように見えるが――とりあえず、順番に見ていこうか。


 まずは最上段、お内裏様とお雛様――なんだが、どちらも微妙に中性的な雰囲気なのはなぜだ?


 何? お内裏様は「男装の麗人」で、お雛様は「男の娘」だと? なんでそんな奇妙な組み合わせになって――って、これが時代のニーズを反映しているっていうのか? まったくもって訳が分からんな。


 次。三人官女、なんだが――何かこの三人、必要以上に仲が良さげじゃなかろうか。それに、なにげにみんな頬をほんのり染めていて――何? この段のテーマは「百合」だと? 百合とは一体何だ? それに、髪の色がピンクだったり緑だったり青だったり、何だか目がチカチカするな。こんな髪の色の三人官女、見たこと無いぞ。


 さて、今度は五人囃子――だが、今度はやけに男前な人形ばかりだなおい。それに、普通だったら五人囃子が持っているのは楽器のはずなんだが、なぜかみんな刀を持った奇抜な格好をしているぞ。


 ちなみに、この段のテーマは何だ――何、「推し」なのか? 刀○乱舞? どこかで聞いたことがあるようなキーワードだが、はて?


 その次の段は、右大臣と左大臣か――って、おい。何でこの二人は互いに向かい合って並べられているんだ? それに、この二人も三人官女と同じで、見た感じ頬が赤いような?


 何? 「ブロマンス」とな? それは一体何だ? 「受け」だの「攻め」だの、何でそんなキーワードがひな飾りの場に出てくる? なんかこの段については、あまり深く触れないほうが良いような気がしてきたぞ。


 で、人形が並ぶ最後の段が仕丁しちょうなんだが――この三人、なんで揃いも揃って小学生っぽい見た目なんだ?


 ――あー、あんまり聞きたくはないんだけれども、一応聞いておこうか。この段のテーマは?


 「ショタ」か――やっぱ聞くんじゃなかった。


 一体何なんだ、このひな飾りは! どの人形も訳が分からん設定になっているし、無駄に全身フル可動でどうにも意味深なポーズをとりまくっているし、桜とたちばなの代わりに百合と薔薇が飾ってあるし。


 えっ? これが今時の女子の好みを反映したひな飾りだって?


 ろくなもんじゃねぇな、全く。これじゃあ女子は女子でも「腐女子」の祭りじゃねぇか。

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