飾り方忘れた。

シーラ

第1話



俺は今、とても悩んでいる。


実家には7段の雛飾りがあるのだが。これを明日までに一人で飾り付けしなければいけないんだ。


明日、姉と姪が遊びに来るからと母が張り切って飾ろうとしたら。飾りの入った箱を押し入れから出そうとして、うっかり足の小指を箱の角にぶつけてしまったそうだ。

それは、まあ、よくある話だとは思う。だけど、当たりどころが悪かったようで、痛みに飛び退いた母が後ろに飛び退いた所。母の後ろに歩いてついて来ていたインコのポポを踏みそうになり、踏むまいと変に足を捻って床に倒れ込んだらしい。


不運が重なり、足首を痛めた母に雛飾りを飾る力はなく。今は痛み止めを飲んでベッドで横になっている。そこで駆り出されたのが、俺。

いやいや、雛飾りなんて飾った事ないから。配置は写真を見てとスマホに昨年の物が送られてはきたが。箱を開けた中身の細々した事っ!!でも、姪のためにやるしかない。遠巻きに撮られた見本の写真と見比べながら、なんとか飾っていく。


右大臣と左大臣にそれぞれ弓と矢を持たせるが、剣が3本余った。困ったので、三人官女に持たせてみたる。アサシンポジションのようで、とてもカッコいい。

次は、五人囃子を背の順に少し斜めがかったように並ばせてみたら、ダンスパフォーマンスしているかのようだ。これはこれで、新たな時代って感じでカッコいい。楽しくなってきたぞ。


女雛は扇子と立傘(たてがさ)をそれぞれ持たさせて、五人囃子ダンサーズのおっかけみたいにして。仕丁(しちょう)の3人には日頃の労いに柄杓を持たせて、男雛と酒を楽しんでいるようにした。


「ぴょ……」


テケテケと床を歩く特徴的な音が聞こえ振り向くと、母に寄り添っていたポポが何となく申し訳なさそうに寄ってきた。自分のせいだと責任を感じているのか?


「大丈夫だよ、ポポ。こういうのは楽しんだ方が雛飾りも喜ぶ。さあ、お前は最上段の真ん中にスタンバイしてくれ。」


ポポを手に乗せ、真っ赤なお立ち台にのせ。ポポの大好きなノリの良い音楽をかけると。落ち込んでいるように見えていたポポは激しく首を上下させて踊り出した。

ダンサートリの降臨に、雛人形の皆んなが楽しんでいるかのような一体感。これぞ、令和の雛人形。完璧だっ!


「いいぞポポ!さいこ〜!かわいぃ〜!」


俺はスマホでその愛らしい様子を撮影し、母の元へ意気揚々と報告に行き。そして、めっちゃ怒られた。


「はぁ〜。やーっと完成したぜ。」


これは一人で任せてはおけないと、母からテレビ電話で指導の元。俺は1時間かけて雛飾りを飾り直した。すんごく大変だったけど、完成できたのは素直に嬉しかった。明日、姪っ子喜んでくれるかな。


「ポポちゃん、かわい〜い!」


翌日。遊びに来た姪は、ポポダンサーの雛飾りの動画を見てとても喜んでいる。来年はもっと派手にやってみようかな。





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