じゃれ合う琢海と颯太を眺め、「まるでボーイズラブみたい」と思う結菜。三人の関係は「好き」の萌芽をきっかけに変わっていく。
短い作品なので多くは語れません。とても切なかったです。
子どもってある程度の年齢になると、男子は男子、女子は女子で固まって、異性のことをまるで自分とは別の生き物のように扱うことがあります。
でもそれは同性・異性というものを意識しているからで、やがて多くの場合は同性・異性への興味、そして恋愛感情へと発展していきます。
好きになるのは止められない。でも、その「好き」をどうするのかは人によって違う。
告白する人もいれば、心の中にしまっておく人もいる。自分の気持ちでいっぱいになる人もいれば、他人の気持ちを想像する人もいる。好きな人との間に何かしらの壁がある場合もある。
思春期の精神面での成長や、それがもたらす葛藤、他者との関係の変化など。いろんなものがギュッと詰まった作品でした。
2,000文字以上の読み応えがありました。
こんな言葉があります。『BLの間にはさまる女』や『百合に挟まる男』。
これは同性愛カップルの間に挟まって、三人組、または三角関係みたいなのになろうとすることを意味します。
本作の主人公は、奇しくも「BLの間にはさまる女」になってしまいます。
拓海くんと颯太くんという、とても仲のいい男子の二人組。二人の間にある感情がどういうものかはわからないけれど、傍から見ていると恋愛しているカップルのようにも見えてしまう。
そして男の子にとっての恋愛感情とはどんなものなのかと考えさせられる。
こういう風に「異性を未知なもの」と思って葛藤する感じが、思春期の少女らしいたおやかさに満ちていて、その心情に強く引きこまれます。
やがて、拓海くんの周囲で変化が起き、それまでとは違った関係性を築くことに。
自分という存在が入り込んだことで変化してしまう、拓海くんと颯太くんの二人。そこにあった心情などを想うことで、強い切なさを感じることになりました。
二人の関係は「尊い物」だと感じていた。でも、それを他ならぬ自分自身が終わらせてしまう。
尊い物を壊してしまう切なさ。それでも自分が獲得する幸せ。誰かが幸せになる裏では、誰かが涙を呑むこともある。
誰かの気持ちを想像しようとすれば、そこには完璧な幸せなんかない。それでも手に入れた何かを大切に思って生きていくしかない。
そんな思春期の繊細な感情の機微が描かれていて、とても心を震わされる作品でした。