つまらん

「ちょっと雄二、それとって⋯⋯あぁ⋯⋯そっか。もうおらんかったわ」


 ⋯⋯なんや。


 つまらんな。


 あいつおらんから、うちが淋しいみたいやん。


 腹立つから買物でも行こうと思った矢先。


「涼子?」


 ⋯⋯え?


「なんや久しぶりやな?」


 あの女⋯⋯やっぱり。


「なんなん? 今はその女のとこに転がり込んでるってわけ!?」

「何を言うてけつかんねん。こいつぁ、俺の妹やん。前にも言うたやろ?」


 雄二の向こうからもひょっこり顔出して、恐る恐ると言った感じで出て来た可愛い耳付き帽を深く被ったあざとい女は⋯⋯確かにどことなく雄二に似てる?


「どうも、妹の⋯⋯綾香です」

「涼子です」


 そして私は衝撃的な事実を知る。


「あなたが涼子さん?」

「せやったらなに?」


 綾香ちゃんがガバっと頭を下げる。え、なんなん?


「お願いします!」

「え、ホンマ何!?」


「お兄ぃとヨリを戻してもらえませんか!?」

「おい、綾香! かっこ悪いからやめろや!」


「お兄ぃはだまっといて! 涼子さんはたぶんおお兄ぃのこと誤解してます! お兄ぃ、涼子さんと別れてから部屋の隅っこでイジケ汁垂れ流してますねん! うち、そんなお兄ぃ見てられへん!」

「イジケ汁って⋯⋯」


「寝言も涼子ぉ、涼子ぉ言うてうなされて、もう見てられへんわ!」

「綾香おまっ! ホンマやめぇ!」


 雄二⋯⋯


 うちの誤解? お金のことも?











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